初心者向け!スノーボードの逆エッジの原因、仕組み、防止法

はじめに

スノーボードに始めたてのスノボ初心者によくある転け方が「逆エッジ」です。この「逆エッジ」に不意打ちされると、めちゃくちゃ痛いです。ある程度スノーボードに慣れてくると、「逆エッジ」の予兆を感覚で感じれるようになりますが、初心者の方でそれを感じられる人はいないでしょう…ただし、逆エッジの仕組みや原因を理解し、逆エッジの防止法を知れば、逆エッジの回数を減らすこと、逆エッジによる体へのダメージの軽減ができます。

逆エッジの仕組み

まず、逆エッジの仕組みから話していきます。逆エッジが起きるのは進行方向にあるエッジが雪に引っかかった時です。例えば、下(谷)をみて滑っているときは、カカト側のエッジ(ヒールエッジ)に雪が接触し、つま先側のエッジ(トゥーエッジ)に雪は接触しません。図1を参照。

図1

一方で、上(山)をみて滑ってるときはつま先側のエッジ(トゥーエッジ)に雪が接触し、カカト側のエッジ(ヒールーエッジ)に雪は接触しません。図2を参照。

スノーボードの安定状態

図2

このように、進行方向と逆側のエッジを使っていれば、「逆エッジ」にはなりません。一方で、進行方向と同じ側のエッジを使うと図3、4のように「逆エッジ」になります。当たり前の事ですが、滑っている時、人は進行方向に動き続けています。しかし、逆エッジにより、進行方向側のエッジが雪に引っかかると、足元のみ進行方向への動きが止まります。一方で、身体全体としては慣性の法則により動き続けます。この結果、足元を軸とした回転運動を始めます。そのため、つまづくことと原理的には同じです。ただ、日常生活においてつまづいたときは、躓いた足と反対の足を一歩に踏み出すことで、無意識に転ぶことを防止しています。しかし、スノーボードの時は両足が固定されています。そのため、一歩前に足を踏み出すことができず、転んでしまうわけです。そういう意味においては、両足同時につまづいているとも言えるでしょう。

図3

図4

これで「逆エッジ」の仕組みは理解できたと思います。しかし、「本当にこのような体制になることがあるのか」と疑問に思いませんか?確かに、この図は原理を説明するために、多少デフォルメしています。というわけで、次は「逆エッジ」が生じる原因についてよりリアルな目線から考えていきましょう。

逆エッジの原因

「逆エッジ」の仕組みはもうお分かりになったと思います。では、今度は逆エッジが起こる原因について考えていきましょう。逆エッジは基本的に3つの状況が組み合わさった時に起こりやすいです。その3つの状況は「緩斜面」「荒れた雪質」「初心者卒業時」です。

緩斜面・荒れた雪質

緩斜面(なだらかな斜面)かつ荒れた雪面は、非常に逆エッジが起こりやすい斜面と言えます。

緩斜面だと、進行方向側のエッジと雪面の間の角度が極めて小さくなります。このことを遊び(余裕)が少なくなると言います。その状況で雪面が荒れていると、図のように進行方向側のエッジと雪が接触しやすくなります。その結果、逆エッジが頻発するわけです。初心者は急斜面が怖い分、なだらかな斜面を好みますが、以下の図から分かるようにあまりに平坦すぎると逆エッジが起こる可能性が上がってしまいます。ですので、緩斜面すぎるところでの練習はあまりお勧めしません。

逆エッジの起こりやすい斜面

図5 逆エッジが発生しやすい斜面

初心者卒業時

一番逆エッジが起こりやすい状況は「木の葉滑り」から「普通のターン(スライドターン)」への過渡期です。つまり、初心者卒業時にもっとも「逆エッジ」になりやすくなるわけです。

まず、初心者は基本的に木の葉滑りから始めます。木の葉滑りにはターンがなく、慣れてくればほとんど逆エッジをくらわなくなります。半日もあれば、大体の斜面は木の葉滑りで滑り降りれるようになります。しかし、これだけでは面白くなくなります。そして、次のステップであるスライドターンを練習し始めるわけです。

まず、「木の葉滑り」と「スライドターン」の性質の違いから逆エッジの成りやすさを紐解いていきましょう。木の葉滑りの場合、文字通り木の葉のようにヒラヒラと滑ります。この時、使用しているエッジを考えてみると、図6に示しているように、常にかかと側だと分かると思います。一方で、スライドターンの場合、目まぐるしく使用するエッジが変わります。このエッジ転換点こそが逆エッジポイントです。とはいえ、ここの問題を乗り越えない限り「普通のターン」は出来ないわけですから、頑張るしかないんですけどね。

木の葉滑りとスライドターン

図6

逆エッジの防止法

逆エッジの原因についてもお分かり頂けたと思います。以上のことから、初心者を脱するためには、多少の「逆エッジ」は覚悟するべきことが分かったと思います。そうはいっても、できるだけ逆エッジは減らしたいものですよね。私はすべて独学でやってきたので、人の倍以上に逆エッジを味わってきました。今考えると、よくスノーボードを止めなかったなぁ~

というわけで、逆エッジの防止法をまとめていきます。

スクールに入る

お金はかかるけど、これが一番のおすすめ。当然のことながら、スクールの先生が一番初心者の指導に詳しいですからね。普通のターン程度なら、半日でもできるようになります。(友人談)それも、あまり「逆エッジ」にならずにね。なので、間接的にはなりますが、逆エッジを防止する最も有効な方法はスクールに入ることです。

3ステップ練習法

スクールがおすすめといっても、自力でなんとかしたいと言う人も多いと思います。特に大学生にはその傾向が強く見られます。そういう方には、3つのステップに分けて練習することをおススメします。独学でやる方はターンを2ステップとして捉える方が多いので、その例もNGケースとして挙げておきます。グーフィーの方はターンの左右が反転するので注意してくださいね。グーフィーの方だと、フロントサイドターンとバックサイドターンの絵及び図中のLとRを入れ替えて考えると良いですよ。

フロントサイドターン

図7

それぞれの段階を簡潔に示すと以下のようになります。

STEP1
板の進行方向:横方向から下方向に徐々に変えていきます。
重心の位置 :かかと立ち(かかと荷重)の状態から徐々に中央に重心を寄せていきます。
 体の動き :体の向きは板の進行方向を先取りする様に意識します。

STEP2
板の進行方向:完全に下方向を向けます。
重心の位置 :重心を左足の中央に置きます。そのあと、重心を少しずつつま先側に移動させます。
 体の動き :体の向きは一度板と一致させます。そのあと、板の進行方向を先取りする様に体全体を時計周りさせます。この時、動きの順序は上半身→下半身→板の順番を意識しましょう。

STEP3
板の進行方向:下方向から横方向に徐々に変えていきます。
重心の位置 :重心を徐々につま先側に移動していきます。
 体の動き :体の向きは板の進行方向を先取りする様に意識します。

バックサイドターン

バックサイドターン図8

それぞれの段階を簡潔に示すと以下のようになります。

STEP1
板の進行方向:横方向から下方向に徐々に変えていきます。
重心の位置 :つま先立ち(つま先荷重)の状態から徐々に中央に重心を寄せていきます。
 体の動き :体の向きは板の進行方向を先取りする様に意識します。

STEP2
板の進行方向:完全に下方向を向けます。
重心の位置 :重心を左足の中央に置きます。そのあと、重心を少しずつかかと側に移動させます。
 体の動き :体の向きは一度板と一致させます。そのあと、板の進行方向を先取りする様に体全体を反時計回転させます。この時、上半身→下半身→板の順番を意識しましょう。

STEP3
板の進行方向:下方向から横方向に徐々に変えていきます。
重心の位置 :重心を徐々にかかと側に移動していきます。
 体の動き :体の向きは板の進行方向を先取りする様に意識します。

まとめ

STEP2は最も難しく逆エッジになる危険性が高いです。逆エッジの怖い方はSTEP2の動作をより慎重に行いましょう。STEP2で意識するべきことは、後傾の防止重心と体の連動です。後傾とは、後ろ足(ここでは右足)に重心が寄ることを言います。この状態になると、非常にターンをしづらくなります。そのため、重心を前足(左足)に寄せることを強く意識しましょう。重心と体の連動は慣れたら誰でもできますが、初心者には難易度が高いです。フロントサイドターンの場合は体全体ゆっくり時計回りさせつつ、重心をつま先に移動させるとうまくいきます。バックサイドターンの場合は体全体ゆっくり反時計回転させつつ、重心をかかとに移動させるとうまくいきます。このバランスの取り方が初めは非常に難しいと思います。もし、うまくバランスをとれないと逆エッジで転んでしまいます…

NG例(逆ひねりターン)

初心者の方にありがちなターンが逆ひねりターンです。このターンには多くの欠点があります。具体的な欠点としては、逆エッジ発生しやすいこと、疲労度が大きいこと、今後の上達の妨げになることなどが挙げられます。まず、逆ひねりとは上半身と下半身を逆方向にひねって回転力を得る動作のことを指します。この動作には瞬発力があるので、一気に板を回転させることが可能です。その力を用いて、多くの初心者は「逆エッジ」を怖がるあまりに逆エッジになりやすいポイントであるSTEP2の段階を無意識に飛ばそうとします。しかし、その動きこそが逆エッジを誘発してしまうのです。逆ひねりは瞬発力がある分、エッジ角度の微調整が難しいですからね。また、逆ひねりターンだと次のステップである「カービングターン」にステップアップするのが難しくなります。「カービングターン」とは、curving turnと表記されるように雪面を彫るターンの事を指しています。このターンでは、身体全体の向きと板の向きがほぼ同調します。正しくは、身体の向きの方が若干先行します。このように、上半身・下半身・板の動きがばらばらになる逆ひねりターンとカービングターンの性質が全く異なります。それゆえに、逆ひねりターンの癖が付いた状態からの上達は困難なのです。

逆エッジのダメージ軽減法

上達する過程で「逆エッジ」を完全に避けることは無理です。そのため、「逆エッジ」によるダメージの軽減方法についてもお話ししていきたいと思います。ダメージの軽減手段は二つに大別できます。「体術的なもの」と「道具によるもの」です。

体術的なダメージ軽減法

逆エッジは図3、4に示したように、前方に転ぶタイプと後方に転ぶタイプのものがあります。前方に転んだ時に、手をつっかえ棒のように使用してしまうと、怪我のリスクが高まります。だから、野球のヘットスライディングのように転んだ時には雪面で手を滑らし、その後身体全体を滑らせて衝突のエネルギーを吸収しましょう。そうすると、身体へのダメージだけでなく、けがのリスクも抑えることができますよ。

後方に転ぶ場合にもっとも注意するべきなのは、頭を打たないことです。これを防ぐ方法は非常にシンプルで「逆エッジになったな」という瞬間に顎を引くことです。これにより、頭部を直接打つことを避けられます。また、柔道で習った後ろ受け身と同様にこけた時に腕を雪面に叩くと良いです。

道具によるダメージ軽減

ヘルメット

逆エッジで後方に転んだ時にもっとも有効な道具がヘルメットです。ヘルメットによる頭部保護効果は論文でも言及されています。そのため、初心者ほどヘルメットをかぶることをおススメします。

初心者がスノーボードでヘルメットが必要な理由

ケツパッド

逆エッジで後方に転倒した際に、一番最初に接触するのがお尻です。つまり、一番ダメージを受けると言って問題ないでしょう。そこで、ケツパッド君の登場です。これをつけるだけで、お尻の痛み方が全く違います。「逆エッジになっても、この程度の痛みか」と感じたほうが、より積極的に挑戦でき、上達も早くなると思います。その上、ケツパッドは防寒対策にもなります。リフトの座るところって意外と寒いんですよ。

まとめ

  • 逆エッジは進行方向側のエッジが雪面に接触すると起こる。
  • 逆エッジが生じやすい条件は「緩斜面」「荒れた雪質」「初心者卒業時」です。
  • 逆エッジの防止法で最もおすすめなのは、スクールに入ることです。
  • 独学でスノーボードをしたい初心者は3ステップ練習法試してみてください。
  • 前方に転倒する逆エッジのダメージを軽減するためには、ヘットスライディングのように手を滑らせてから、身体全体を滑らせます。
  • 後方に転倒する逆エッジのダメージを軽減するためには、転倒時に顎を引き、両手で雪面をたたいて受け身をとります。
  • 特に初心者は頭部保護のためにヘルメットをかぶることが重要です。その重要性は論文においても言及されています。
  • ケツパットは最も衝撃を受けるお尻の保護だけでなく、防寒機能も備える優れものです。