「利他主義」と「利己主義」の意味と違い、そこから見える本質を考える

一般的に、利己主義は悪、利他主義は善と考えられています。

個人より集団を重んじる日本はこの傾向が強いです。

しかし、利己主義は本当に悪なのでしょうか?

利他主義は本当に優れているのでしょうか?

というわけで、今回は利他主義と利己主義の意味と違いについて解説します。

利他主義について

利他主義の意味は?

辞書によると、利他主義の定義は次のようになっています。

自分を犠牲にしても他人の利益を図る態度・考え方。

引用:三省堂 大辞林第三版

要するに「他人の利益を最優先にする態度・考え方」です。

確かに、自分ではなく、他人を重んじるのは、素晴らしい考えです。

具体例を挙げるなら、ボランティアでしょうか?

ボランティアは対価を得ずに人のために奉仕します

このように考えると、利他主義は素晴らしく社会を豊かにすると言えます。

コロナ禍での医療従事者の働きも利他主義の一例と考えられます。

給料もボーナスも下がる中、感染リスクのある職場で患者さんのケアしていますからね。

このように、利他主義からは自己犠牲の美しさを感じられます。

しかし、持続可能性の観点で考えると良くありません。

利他主義の本質と限界

もちろん、利他主義を否定するつもりはありません。

ボランティア活動や寄付文化は人間が持つ美徳の一つです。

しかし、限界があることも事実です。

それは対価を得られないからです。昨今話題に上がる言葉なら「やりがい搾取」とも言えます。

もちろん、ボランティア活動や寄付活動を通して私たちは感謝・やりがいという精神的な対価を得ることが出来ます。医療関係者でも患者からの感謝をやりがいにしている人は多いです。

しかし、私たちは精神的な満足だけでは生きられません。

やはり、金銭的な報酬も必要になります。

利己主義について

利己主義の意味は?

辞書によると、利己主義は次のように定義されています。

自分の利益を最優先にし、他人や社会全般の利害など考えようとしない態度。身勝手な考え方。エゴイズム。自己主義。

引用:三省堂 大辞林第三版

要するに「自分の利益を最優先にする態度・考え方」です。

この定義を見ると悪のように思われます。

典型的な利己主義者及び集団を考えてみると、詐欺師や悪徳企業などがあります。

他人の利害なんて一切考えてませんからね。自分さえ儲かれば良いという態度です。

このように考えると、利己主義は否定されるべきものと結論付けられそうです。

しかし、本当にそうでしょうか?もう少し掘り下げて考えましょう。

利己主義の本質とは?

先ほど、利己主義は自分の利益を最優先する態度と説明しました。

しかし、「他者に損失を与えて利益を得ること」「他者に利益を与えて利益を得ること」のどちらが、自己の利益を最大化させる上で合理的でしょうか?

近江商人の「三方良し」(売り手良し・買い手良し・世間良し)の観点でも、後者の方が正しいです。

また、ことわざにも「情けは人の為ならず」(人にかけた情けは巡り巡って自分に返ってくる)というものがあります。

実際、莫大な利益を上げている企業(GAFAなど)は総じて、世界の発展に寄与しています。つまり、他者にも利益を与えて自分も利益を得ているわけです。

このように、自分の利益を最大化するためには他人や社会に利益を与える必要があります。

つまり、利己主義を合理的に追求すると、利他的にならざるを得ないわけです。

そう考えると、利己主義を追求するのも一概に悪いと言えないのではないでしょうか?

結果として、持続的な利他に繋がるわけですからね。

まとめ

利他主義とは?

自分を犠牲にしてでも他者に利益を与える態度・考え方のことです。

利己主義とは?

自分の利益を最優先し、他者や社会への利害を考慮しない態度・考え方のことです。

しかし、利己主義にも2つの種類があります。一つは刹那的な利己主義です。これは短期的な自己の利益を得るために他者に犠牲を強いる考え方です。詐欺師や悪徳企業が分類されます。

もう一つは、合理的な利己主義です。これは長期的に自己の利益を最大化するために、他者にも利益を与えるという考え方です。アップルやトヨタなど世界的な企業が分類されます。

利他主義の本質は?

利他主義の思想自体は立派です。しかし、現実的には難しいものがあります。

自分の幸福を追求しづらく、持続可能性に欠けているためです。

そのため、他者に与えられる総量も限られてしまいます。

利己主義の本質は?

近江商人の三方良しにもある通り、自己利益追求のためには、他者に利益を与える必要があります。

つまり、利己主義の本質は自分の利益を追求するために他者へ利益を与えることなのです。