理系大学院に進学するメリット・デメリットを考える

理系大学院に進学するメリット

論理的思考力が身につく

まず、論理的思考力(≒考える)がどういうことかわからない方ご一読ください。

大学院で研究をすると、嫌でも論理的思考力が付きます。その理由は2つあります。1つ目は、研究を遂行すること自体が仮説と検証の繰り返しだからです。論理的思考力がなければ、仮説を打ち立てることも、それに対する反証を考えることもできませんからね。2つ目は、教授と議論できるからです。一般人と比較して大学教授の論理的思考力の高さは圧倒的です。少しでも話に矛盾点疑問点があれば、鋭く突っ込んできますからね。人によっては、「ロジカルハラスメント」と感じる人もいるくらいです。興味のある方はロジハラの記事をご覧ください。

【ロジハラとは?】具体例を交えてロジハラが起きる原因と対処方法について徹底解説

「ロジハラ」という言葉があるように、自分の話に厳しい突っ込み(正論)を入れられるのは、精神的にきつい部分もあります。それでも、自分で気付くことの出来なかった矛盾点等を指摘してくれることは非常に良い勉強になります。そして、それを何度も繰り返しているうちに、教授がいなくても自分の話の矛盾点や疑問点に気付くことができるようになり、自然と論理的思考力が養われていきます。

就活が圧倒的に有利

就活に関しては大学院生が圧倒的に有利です。主要400社やTOPIX core30に名を連ねる企業の理系職内定者はほとんど大学院生です。もちろん、大学生もいるにはいますが、割合としてはかなり少数です。大卒で就職した後輩達は、就活が大変だったそうです。私が見る限りその子達が能力的に問題があるわけではありませんでした。それでも、大学院生に勝てる気がしなかったと言っていたのが印象的でした。確かに、大学院生の方が2年分人生経験が多いわけですから、同じ土俵で勝負するというのはなかなか酷なことかもしれません。それだけでなく、入社後の職種にも影響が出てきます。あくまで傾向での話ですが、大卒の方々は生産技術職に就く割合が高く、院卒の方々は開発・研究職に就く割合が高いです。もちろん、院卒でも希望すれば生産技術職に就くことはできます。ですが、逆はあまりありません…

以上のことから、大学院卒のほうがより優位に就活を進めることができ、職種選択の幅も広がると言えます。

理系大学院に進学するデメリット

お金がかかる

大学院に行くこと最大のデメリットは「お金がかかる」ことでしょう。大卒で働けば、お金がかかるどころが貰えますからね。どれくらい余分にお金がかかるのか計算してみましょう。

大学院の学費は、国公立の場合だと年間約50万円で、私立の場合だと年間約100万円です。大学院の在籍期間は2年なので、国公立は100万・私立は200万かかる計算になります。一方で、大卒で働きに出れば、新卒の平均年収から計算して、2年間で400万円程度の収入になります。つまり、国公立の大学院に進学した場合は500万円程度、私立の大学院に進学した場合は600万円程度のコストが生じると考えることができます。

ただし、この損失額をそのまま受け取ってはいけません。先ほどメリットの欄で説明した通り、大卒と比較して院卒の方が就職活動を優位に進めることができます。例えば、大卒時には入社が叶わなかった企業にも入社するチャンスがありますからね。実際に、大学院卒の先輩でホンダに入社した方がいましたが、大卒時には一度ホンダを落ちています。一応他社の内定もあったそうですが、どうしてもホンダに行きたかったらしく内定をお断りしたそうです。ちなみに、その会社の平均年収はホンダよりも100万円程度低かったそうです。

そう考えてみるとどうでしょう?超単純な計算ですが、給与差は100万円×40年で4000万円となります。そうすると、500~600万円はコストではなく実は投資だったということになります。以上のことから、大学院へ進学することは「自己投資」であり、「コスト」ではないことがお分かり頂けたと思います。結局のところ、投資対象である自分自身が「何を学び、何をするか」にかかっていることになるわけです。

社会に出るのが遅くなる

院卒は大卒よりも2年分働き始める期間は遅いため、一般に言われる「ビジネスマナー」「ビジネススキル」を学ぶ時期も遅くなります。社会人としては大卒よりも2年間遅れをとることになりますからね。実際、私の周囲では院卒よりも大卒の方が大人びている感はありました。やはり、自活している人間のほうが精神的に成熟するのでしょうか。ただし、その遅れを補って余りある成長を2年間でしていれば、全く問題ありません。実際に、大卒時に内定をもらえなかった企業から内定を得られた院生がいるんですから。

最後に

結局のところ、「大学院進学」も「大学進学」と同じく将来への自己投資だと思います。ただし、大学とは異なり、大学院では主体性向上心要求されます。主体性と向上心がある人ならば、大学の時よりも大きな成長を実現できますし、それらがなければ、大学の時よりも成長しないでしょう。大学院を出ても就活に苦労する人は少ないけれど確実にいます。実際に、この目で何人か見てきましたから…私の場合は、大学院の2年間で大学の4年間の比にならないレベルで成長できたと感じます。就活も楽勝でしたし。そのため、大学院に進学したことは正解だったと確信しています。

ありきたりな答えですが、「大学院に進学すべきか否かは人による」ということです。ただ僕の経験上、大学院進学に適している人は、「主体性があること」と「向上心があること」です。こういう人は例外なく、大学院生活を通して成長していると感じます。「そういう人はどこでも成長できるよ」と言う人もいると思います。確かに、どこでも成長できると思います。ただし、成長量は大学院が圧倒的だと思います。大学院で研究する方が会社で働くよりも遥かに自由に行動できますからね。会社では基本的に利益のために行動しなければなりませんが、大学院では極端なことを言えば、自己成長のために行動することができますから。一方で、会社と異なり大学院ではサボることが非常に簡単です。周りの人にもあまり迷惑をかけませんし…そのため、「主体性」と「向上心」が重要だと言いました。もし、自分に主体性と向上心があると思われる方は是非とも大学院への進学をおすすめします。そういう方は、必ず成長できると思います。ただし、学生を労働力としか見ないブラック教授も一部にはいますので、それだけは注意してくださいね。