昔は「何を言っているのかわからん!お前は言葉が足りない」とよく怒られたものです。この言葉を丁寧に解釈すると、言葉が足りないことによって、相手に自分の考えが伝えられていないということになります。一言で表すなら、「コミュニケーション能力不足」ってとこでしょうか?
ここで、分かりやすいように簡単な例を挙げましょう。
一般に、「ごはんに行く」=「夜ごはんに行く」という暗黙の了解があります。そのため、ごはんに行く?と誘われると、夜の予定を考えることになります。
それにも関わらず、Aさんは「ごはんに行く」=「昼ご飯に行く」と捉えてBさんを誘いました。その上、集合時間も10時という中途半端なものでした。そのため、「ごはんに行く」=「夜ごはんに行く」と考えているBさんは余計混乱してしまいます。
初めから、Aさんは「昼ご飯にいきましょ?」、「ランチ行きましょ?」と誘って入ればよかったのです。そうすれば、無用な誤解を生むことなく、スムーズ意思疎通できたことでしょう。
このように、言葉足らずは誤解を生み、関係者同士の認識に齟齬が生じます。この齟齬が仕事において生じると、典型的な言った・言っていないの不毛な論争が始まってしまいます。
これが起こると職場の生産性が一気に低下してしまいます。
目次
言葉が足りない人の特徴
指示語が多い
言葉が足りない人は、指示語が多い傾向にあります。もちろん、普段から一緒に仕事をしたり、遊んだりしている人同士なら十分に意思疎通は可能です。
しかし、初対面の人や普段あまりコミュニケーションを取らない人に指示語を使い過ぎると、その指示語が指す内容を解釈できず会話についていけなくなります。
例の件だけど…と言われても、例の件が何を指すのか分からないければ、どうしようもありませんもんね。
要は指示語が多いと話し手の認識≠聞き手の認識になるリスクが高まるわけです。ですから、仕事をする時はなるべく指示語は使用しないことをお勧めします。
5W1Hが抜けている
言葉が足りない人は、5W1Hの一部が抜けている傾向があります。5W1Hとは、Who(だれが)、When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように)を意味します。
会話の中には、この5W1Hを適切に入れて話す必要があります。冒頭に示した例の場合だと、昼なのか、夜なのか?というWhenの部分が抜けていますね。
5W1Hが抜けていると、先ほどの会話にもあったように、聞き手側が情報を推測して補完する必要性が生じます。
それは、聞き手と話し手の間に認識の齟齬をもたらすだけでなく、情報を推測するために聞き手側は余分な能力を使うことになります。そうすると、話の内容にもついていけなくなる可能性があります。
言わなくても分かると考えている
わざわざ言わなくても相手が理解できると考えているため、結果として言葉足らずになっています。
確かに、普段から付き合いのある人なら多少5W1Hを省いても理解できると思いますし、私的なコミュニケーションでは、それが居心地のよさにもつながります。
しかし、100%理解できるのか?と考えると疑問が残ります。
遊びの会話ならそれでもいいと思いますが、真面目な会話をする場合は相手が誰であろうと5W1Hを頭の中で整理した後に会話をするほうが良いでしょう。慣れてくれば、話をしながら会話を組み立てるということもできるようになります。
逆に、このような5W1Hの組み立てがおろそかになると、互いの認識にズレが生じてしまい、言った・言わない論争に発展するリスクがあります。
誰に対しても専門用語を使う
もちろん、実務者レベルの会話において、専門用語を使用することは問題ありません。
しかし、現場を知らない経営層や管理職に対して、専門用語を使うのは適切ではありません。そりゃ、専門用語を知らない人に説明したって理解してもらえるはずがありませんもんね。
ですから、同じ内容であったとしても、聞き手の知識レベルに合わせて言葉を変える工夫をすると良いですよ。
自分の話したいことを話す
多くの人は、自分の話を聞いてもらいたいと気持ちを持っています。それは、プライベートだけでなくビジネスにおいても同じです。
そのため、実務者の多くは、自分がいかに苦労をして今の仕事を成し遂げたかを説明したくなるものです。そりゃ、人には頑張った話を聞いてもらいたいですもんね。
しかし、経営層は利益への貢献度・管理職は進捗状況について知りたくなるものです。
そうなると、伝えたいことと知りたいことに齟齬が生まれ、ある部分には過剰に、また別の部分では言葉足らずになるという問題が生じます。
このような問題を起こさないためにも、聞き手側の知りたいことをしっかりと把握した上で話を組み立てるようにしましょう。
言葉足らずの治し方
指示語はなるべく使わない
出来るだけ指示語は使わないようにしましょう。それは、聞き手に負担をかけてしまうという特徴があるからです。指示語の内容を推定しなければいけないですからね。そのため、話の内容に集中しづらくなります。
もちろん、話が上手い人なら指示語の使い方も上手なので、問題はありません。しかし、元々言葉が足りない人が指示語を多用したらどうなるでしょうか?
そりゃ、訳が分からなくなりますよね。
つまり、指示語は上級者向けのツールというわけです。ですので、言葉が足りない自覚のある人は極力使わないことをおすすめします。それでも、無意識に指示語が出てしまう場合は、人に話す前に自分の頭の中で話のストーリーを組み立てておきましょう。
5W1Hを整理してから話す
正確かつ素早く意思疎通の取れる人は全員5W1Hを上手く活用しています。5W1Hを活用して先ほどの例文を書きなおすと次のようになります。
先週美味しい店を見つけたんですよ!(Why)だから、二人(Who)で来週(When)その店(Where)へと昼ご飯を食べに(What)行きませんか?そこまでの交通手段は僕の車(How)で考えています。
冒頭に示した文章と比較すると、格段に分かりやすくなっていますよね?ちょっとメールっぽい感じですけどね。現実問題として、ここまで丁寧にするか否かはTPOによって使い分けると良いでしょう。
慣れてくれば会話しながら話の組み立ても出来るようになりますが、慣れない内はなかなか難しいかもしれません。テンパってしまって頭の中が真っ白になるリスクもありますしね。
ですから、まず頭の中で言うべきことをまとめてから話すという習慣を身につけるとよいでしょう。
そうすれば、より正確かつ素早く自分の考えを相手に伝えることが出来るようになりますし、そのうち、話をまとめながら会話を進めることが出来るようにもなりまよす。
聞き手の知識レベルを把握する
聞き手の知識レベルを把握しておくことも重要です。専門用語ってどこの世界にも存在します。それにより、意思疎通がスムーズに行われるわけです。
いちいち専門用語をかみ砕いて会話していたら、仕事になりませんもんね。しかし、部外者から見れば、専門用語なんて意味不明もいいところです。
もちろん、専門用語にもレベルがあります。
例えば、「ニュートンの運動方程式」はそんなに専門性の高い言葉ではありませんよね?おそらく、高校で物理を学んだ人の多くはF=maというあの式を思い出すでしょう。
一方で、「多様体上の微分形式が…」と言われても、僕を含めた99.9%以上の人が何?ってなることだと思います。
つまり、相手のレベルに合わせて、言葉のレベルを考えましょうということです。
しかし、それが結構難しいのです。なぜなら、自分たちにとっては難しい専門用語も当たりまえの知識ですからね。ですから、聞き手目線の意識を常に持っておく必要があります。
まとめ
「何を言いたいのかわからない!」と言われる言葉足らずな人の特徴は、「指示語が多い」、「5W1Hが抜けている」、「言わなくても分かると考えている」です。
つまるところ、自分本位な話し方をしているわけですね。その問題を改善するためには、次のような対処法を講じるとよいです。
- 指示語はなるべく使わない
指示語を使うと聞き手に負荷がかかり、理解されにくくなります。そのため、指示語はあまり使わないようにしましょう。特に、面識の浅い人と話す時は注意しましょう。 - 5W1Hを整理する
who(だれが)、When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように)を整理してから話をしましょう。初めは、会話と同時並行で5W1Hを押さえるのは難しいと思うので、その場合は先に話す内容をまとめてから話をするようにしましょう。 - 聞き手の知識レベルを把握する
相手のレベルに合わせて、言葉のレベルを考えましょう。難解な言葉を使うと理解されませんし、簡単すぎる言葉を使うと聞き手をイライラさせてしまいます。そのため、相手の顔を見ながら丁度よい塩梅を見つけましょう。
以上ことからもお分かりのように、聞き手本位が重要なわけです。ですから、皆様も聞き手を意識した話し方を心がけるようにしましょう。
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