最近、SNSにおける誹謗中傷問題が話題となっていますね。
もちろん、人格や尊厳を貶める誹謗中傷は問題です。ですから、SNSをはじめとしたネットの実名化も基本的には賛成です。
しかし、多くの人が極度に委縮し批判することすら辞めてしまうのは健全な状態ではありません。
そこで、今回は「誹謗中傷」と「批判」の意味からそれらの違いについて明らかにします。
目次
誹謗中傷の意味
誹謗中傷は次のように定義されています。
根拠のない悪口を言いふらして、他人を傷つけること。
引用:デジタル大辞泉
他人を激しく罵ること。単に他人へ対する悪口だけを指す言葉ではなく、その人の名誉を毀損するようなことを言うこと、根拠の無い悪評を流す行為などを指す。
引用:実用日本語表現辞典
以上の定義から、誹謗中傷には3つの特徴があると分かります。
- 根拠がない、仮に根拠があっても論理的・客観的でない
- 個人的な感情(悪意や敵意)が入り込んでいる
- レッテル張りや人格への攻撃が含まれる
分かりやすいように具体例を挙げて説明します。
具体例
「X氏は即刻議員を辞めるべきだ。国会での答弁を見ているだけで虫唾が走る。どれだけ国民バカにすれば、気が済むのだろうか?これだから、〇〇大学出身のボンボンはダメなんだ。さっさと消えてくればいいのに…」といったような投稿がSNSであったとします。
まず、①について考えます。
「議員を辞めるべき」と主張するに値する根拠がないと分かります。つまり、①の特徴は満たされるわけです。
次に、②について考えます。
「虫唾が走る」・「国民をバカにすれば、気が済むのだろう?」という主張は個人的な感情(悪意)が入り込んでいることを意味します。つまり、②の特徴も満たすわけです。
最後に、③について考えます。
「〇〇大学出身のボンボンはダメなんだ」はレッテル張り、「消えてくれればいいのに」は人格への攻撃に該当します。つまり、③の特徴も満たすわけです。
以上のことから、今回取り上げた具体例は誹謗中傷と断言できるわけです。
もちろん、①~③の特徴の一部が含まれていても誹謗中傷になり得ます。
批判の定義
批判の定義は次のように定義されています。
1 物事に検討を加えて、判定・評価すること。「事の適否を批判する」「批判力を養う」
2 人の言動・仕事などの誤りや欠点を指摘し、正すべきであるとして論じること。「周囲の批判を受ける」「政府を批判する」
3 哲学で、認識・学説の基盤を原理的に研究し、その成立する条件などを明らかにすること。引用:デジタル大辞泉
一般的的な「批判」の意味は2の定義に当たります。
その2の定義を解釈すると、以下の二つの要素に分けられます。
この二つの条件を満たすものが「批判」と考えられるわけです。
- 人の言動・行動などの誤りや欠点を指摘する
- 主張を論理的・客観的に説明できている
具体例
「X氏は即刻議員辞職するべきだ。その理由として公約の不履行が挙げられる。公約は国民との約束であり、それを反故にすることは許されない。」
まず①の条件について考えます。
「公約の不履行」という仕事上での誤りを指摘しています。
次に②の条件について考えます。
主張する根拠として「公約の不履行」を挙げています。これは、論理的・客観的な主張と言えます。
つまり、②の条件は満たされているわけです。
以上のことから、この具体例は正当な「批判」であると判断できます。
誹謗中傷と批判の違いは?
ここで、もう一度「誹謗中傷」と「批判」の特徴について振り返ります。
- 誹謗中傷となる条件
- 根拠がない、仮に根拠があっても論理的・客観的でない
- 個人的な感情(悪意や敵意)が入り込んでいる
- レッテル張りや人格への攻撃が含まれる
- 批判となる条件
- 人の言動・仕事などの誤りや欠点を指摘する
- 主張を論理的・客観的に説明できている
対象が異なる
誹謗中傷の場合は、人のそのものが対象になります。
批判の場合は、人の言動や行動が対象になります。
客観性の有無
誹謗中傷の場合は、個人的な感情が入り込んでいるので、主張が主観的になります。
批判の場合は、主張にしっかりとした根拠があるので、主張が客観的になります。
目的の違い
誹謗中傷は、人を攻撃することが目的です。つまり、誹謗中傷は生産的な活動ではないのです。
むしろ、メンタルを悪化させるので、負の生産性を持つと言えます。
批判の場合は、問題を取り上げ指摘して、改善することが目的です。
つまり、批判は生産的な活動なのです。
批判という活動がなければ、世の中の発展も考えられなかったでしょう。
まとめ
「誹謗中傷」と「批判」には大きな違いがあります。
その違いを図で表すと次のようになります。
「誹謗中傷」は無益な行為です。ですから、誹謗中傷はしてはいけません。
それでも、誹謗中傷しないと気が済まない状況なら、クローズドの空間でしましょう。
当人の耳に入らなければ、その人が傷つくことはありません。従って、訴えられることもありません。
一方で、批判を避けることは良くありません。質の高い批判は、大切ですからね。
このように、「批判」と「誹謗中傷」は区別するのが大切です。
最近では、スラップ訴訟も増えているので、正当な批判でも注意が必要なケースもあります。
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