一見すると、「こだわり」と「頑固」の意味はよく似ているように感じます。しかし、言われた時の印象は180°異なります。「こだわりがあるね」と言われたら嬉しいですし、「頑固だね」と言われたら腹立たしいですもんね。
そのことは、「こだわり」と「頑固」の意味が全く違うことを指し示しています。というわけで、今回は、一見似ているけど全く違う頑固な人とこだわりのある人の違いについて説明したいと思います。
目次
頑固の意味
頑固の意味を辞書で引くと次のように定義されていました。
- かたくなで、なかなか自分の態度や考えを改めようとしないこと。また、そのさま。「頑固な職人」「頑固おやじ」
- 取りついて容易に離れようとしないこと。また、そのさま。「頑固な汚れ」「頑固な水虫」
引用:デジタル大辞泉
使用例を見れば分かるように、①の定義は人の性質を表現するもので、②の定義は物体の離れづらい性質を表現しています。もちろんここでは、①の定義から「こだわり」との違いについて説明します。
こだわりの意味
こだわりの意味を辞書で引くと次のように定義されていました。
- ちょっとしたことを必要以上に気にする。気持ちがとらわれる。拘泥(こうでい)する。
「些細(ささい)なミスに―・る」「形式に―・る」- 物事に妥協せず、とことん追求する。「素材に―・った逸品」
- つかえたりひっかかったりする。
「それ程―・らずに、するすると私の咽喉を滑り越したものだろうか」〈漱石・硝子戸の中〉- 難癖をつける。けちをつける。
「郡司師高―・って埒(らち)明けず」〈浄・娥歌かるた〉 [補説]2は近年の用法。引用:デジタル大辞泉
意外なことに、「こだわる」にはポジティブな意味(②の定義)とネガティブな意味(①の定義)が共存しています。また、③・④の定義は、現在ではあまり使用されない古典的な表現と言えそうです。また、①の意味は、心配性・慎重といった性格を表現するもので、今回の比較には適さないと言えます。
というわけで、今回は②の定義から頑固との違いを明らかにしたいと思います。
頑固とこだわりの違い
先ほどお示ししたように、頑固は「かたくなで、なかなか自分の態度や考えを改めようとしないこと。」(デジタル大辞林)こだわりは「物事に妥協せず、とことん追求する。」を意味します。
この二つの意味の共通点は、執着です。
では、相違点はなんでしょうか?それは、執着する対象の違いです。頑固な人が執着するのは手段です。一方で、こだわりのある人が執着するのは目的・結果です。手段に執着する人(頑固な人)は手段が固定されるわけですから、それ以上の成長・進化は望めません。一方で、目的・結果に執着する人(こだわりのある人)は手段が制限されることがないので、目的に対してとことん追求することができます。
ここで分かりやすいように、具体例を示しましょう。
具体例(サラリーマンの話)
電卓が普及し始めた時期に、二人のサラリーマンがいました。一人は自分の頭で計算するほうが早いと考え、電卓など無用の長物だと試しもせず決めつけていました。つまり、手段に執着していたわけですね。
一方で、もう一人のサラリーマンは電卓を活用すれば仕事の効率化が図れると考え、当時は高額だった電卓を即座に導入しました。この人は、手段ではなく目的・結果(仕事の効率化)に執着したわけです。
このように、手段に執着すると「頑固」になり、目的に執着すると「こだわり」になるわけです。
具体例(お茶好きの話)
お茶好きの人が二人いました。二人とも世の中にあるお茶の中で「宇治の煎茶」が一番美味しいと言います。
一人は、生まれてからずっと「宇治の煎茶が一番」と言って、宇治の煎茶しか飲まないという人でした。もう一人は、美味しいお茶を求めて、日本茶のみならず紅茶・ほうじ茶・ジャスミンティー・番茶等様々なお茶を試しました。それでもやっぱり「宇治の煎茶が一番だ」と結論付けました。
前者は、宇治の煎茶を飲むこと自体が目的となっています。つまり、美味しいお茶を飲むという目的が、宇治の煎茶を飲むと言う手段に置き換わっています。一方で、後者は美味しいお茶を飲むことが目的です。このように、「宇治の煎茶が一番」という結論が同じであっても、その人に対して抱く印象は全く変わります。前者は頑固者、後者はこだわりのある人と感じますもんね。
まとめ
「頑固者」と「こだわりのある人」の意味が似ているように感じるのは、お茶好きの具体例でも示したように、結果が同じになることがあるからと考えられます。しかし、次の図に示すようにその内実は全く異なります。手段が可変であれば、常に更なる改善・進化・発見の可能性がありますからね。
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