メンタルの強い人と弱い人の違いについて―メンタルを強くするために必要なこと

やわらかい哲学

メンタルの重要性

勝負事において、メンタルとはとても重要なものです。安定したメンタルなくして、コンスタントにパフォーマンスを出すことは極めて難しいでしょう。勝負事の世界に身を置くスポーツ選手が、メンタルトレーナーなる人の世話になっているというのはよく聞く話です。お金を払ってでも、プロのメンタルトレーナーにケアしてもらう必要性が感じられているからなのでしょう。それほど、メンタルの状態とパフォーマンスの良し悪しは直結していると考えられているのですね。これは何もスポーツに限った話ではありません。ゲームや勉強、仕事についても言えることです。

メンタルが不安定だと集中力を欠くことになります。集中力の低下は、判断力の低下に繋がります。すると、瞬時の判断が求められるゲームにおいては、パフォーマンスにも影響するでしょう。当然、勉強や仕事が手につかなくなることも考えられます。

不安定なメンタルの揺らぎには幾つかの状態が考えられますが、極度の緊張状態などもその内の1つと考えられます。例えば、定期試験や入試などの重要な場面で頭が真っ白になったりしたことがありませんか?あるいは、仕事の大事なプレゼンテーションの時に、大勢の耳目を集めて緊張のあまり固くなり、伝えたいことがうまく伝えられなかったり。普段なら難なくこなせることが、ふとしたことでできなくなる。本来の実力が発揮できない。こういったことは、全て不安定なメンタルの揺らぎによって引き起こされると考えられます。

実際、私も様々な事例を目にしてきました。群を抜いて優秀な生徒が、通るべき入学試験に落ちる。合格間違いなしと目された院生が司法試験で不合格になる。どの事例においても、当人よりも成績では遥かに及ばない他の多くの生徒が合格したことを考えると、当人のメンタルが安定していれば恐らく受かっていただろうということがしばしばありました。

そういった人の話を聞いてみると、ふとしたきっかけで精神的な焦燥感に駆られ、「何をしていいかがわからなくなった」とか「頭が真っ白になった」といったことが共通していると言えます。落ち着いて普段通りこなしていれば何の問題もなくパフォーマンスが出せていたのに、メンタルが作用して力が発揮できなかった。こういったことを考えても、メンタルがいかに重要な要素であるかが、わかるでしょう。

 


メンタルの強い人と弱い人との違い

メンタルの強さとは何でしょう?内容が抽象的であるが故に、考え方も様々でしょうが、私は「 メンタルの強さ=安定した状態でメンタルを保てること」だと思います。つまり、何事にも動じないということです。例えば、何か不測の事態が起きようとも、周りの状況変化に対する焦りを感じることなく落ち着いて対処できる冷静さ。周りの評価に振り回されることなく、前提となる価値観と目的を見失わない、つまり行動原理が一切ブレない安定感。こういった不動心は、メンタルの強さによってもたらされるということです。

メンタルの強い人は動じることがありません。他者からの評価なんて気にしないので、緊張することもない。いわば、確固とした自己を確立しているのです。従って、何をするにしろ、すべきことが明確になっている。確固とした自己があるから揺らぐことのない価値観が土台としてある。そして、目的がブレることがない。状況変化に合わせて、手段がフレキシブルに変わることはあっても、メンタル自体は安定しているので、パフォーマンスも実力通りに出せるということです。

もちろん、問題にぶつかることもあるでしょう。目的を明確にしても、常に手段が最適化できるとは限りません。ある山の頂を目指して登るのに、登山ルートが見出せず、迷うことだってあるかもしれない。それでも、すべきことを見失わなければ、やがては道を見出すことでしょう。理論的、物理的に不可能なことを除けば、それなりにパフォーマンスは出せるようになるのです。

片や、メンタルの弱い人には、こうした安定感がありません。安定感がないから、コンスタントにパフォーマンスを出すことができない。それはなぜか?ブレるからです。譬え、どれほど優秀な人間であっても、ブレてしまえばパフォーマンスを出すことなどできません。

優秀な人間ならば、設定した目的に対する効率の良い手段を選ぶことができるでしょう。そして、それに則った行動をおこすことができる。自らの経験則から、目的と手段を設定して行動におこすプロセスは、合理性の面で洗練されていくこととなります。ところが、せっかく合理的で効率の良いプロセスも、それをきちんと実行できなければ意味がありません

例えば、とてもよく魚が釣れる竿と針を作ったとします。効率の良いものを生み出すという点においては、釣り竿を作った人間は優秀ということになるでしょう。そして、ブレない人間はその釣り竿を使って魚を釣ることがいつでもできるということです。いついかなる時でも。ですが、ブレる人間は、よく釣れる竿を使わず、別の竿を使って釣りをすることがあるということです。せっかくよく釣れる竿を作っても、使わなければ宝の持ち腐れですね?これではパフォーマンスを安定して出せるわけがありません。

メンタルが強い人と弱い人との違いは、メンタルが安定しているかどうか、そして、それによりやるべきことが明確になっていて、行動にブレがないかどうかということなのです。当人が優秀かどうかは別問題と言えます。

 


メンタルを強くするために必要なこと

よくメンタルが強いねって言われます。でも、本当は逆。自分ではかなり弱い方だと思います。朝の血液型占いで悪い結果だと3時のおやつのまでは引きずりますし、星座占いで10位以下だと、ラッキーアイテムを肌身離さず持ってたり、なんてことも。メンタルが弱いというよりかは、単に繊細なだけ(見た目通り!)かもしれませんが、それでもメンタルの揺らぎをなるべくなくすようには努めています。メンタルを強く(安定させる)ためには、主に2つの方法があります。

 

自信を持つこと

1つ目が自信を持つこと。抽象的で申し訳ありませんが、これはかなり重要なことです。自信を持って、己の道を突き進むこと。と言っても、わがまま放題に好き勝手すればいいというわけではありません。時には、人の意見にも耳を傾けて、自分で考えて判断し、主体的に行動するということです。

よく「自分と戦う」なんて表現を見聞きしますが、個人的にはあまり好きな言葉ではありません。そんな言葉聞くと「自分と戦う?じゃあ、戦ってる当人は誰なのさ?」って思います。これ、「自分」ですよね?そうです。大変な思いをして戦うのはあくまで「自分」なんです。だったら、信じてあげましょうよ。せめて当人だけは自分を信じてあげなきゃ、誰が心から信じてくれると言うのですか?誰にも信じてもらえないとしたらこんな悲しいことはありません。

それに純粋に自己を対象化するなんてできっこありませんから。ですから、自分を信じて、主体的に行動するように心がけましょう。これができる人はかなり強いです。

とは言え、そんな簡単に自信を持つなんてできないよとおっしゃる人もいるでしょう。そんな人は、意識を変えてみて下さい。人間ですから、他人の評価が気になることはわかります。時には、あなたのやることにいちいち口を出してくる人もいるでしょう。ですが、考えてみて下さい。あなたの行動に対する責任は誰が取ってくれるのでしょう?

もちろん、仕事であれば、場合によっては、上司が取らされることもあります。ですが、結局はあなたが責任を負わなければならないのです。いちいち口を出してくる人もいますが、たまたまその人の言うとおりになればドヤ顔をしてきますが、うまくいかなかったとしても大抵は責任逃れをします。酷い時には、意見を180°変えてくる人間だっているのです。そんな人を実際に何人も見てきました。誰も責任なんて取ってはくれないのです。でしたら、端から自分の信じるようにすれば良いのです。

ただし、何度も言いますが、時には人の意見に耳を傾けることも重要なことです。人の意見に耳を傾けながらも、最終的には自分で考えて判断し、主体的に行動するようにしましょう。その時に大切なのは、誰のせいにもしないこと。他人や環境のせいにしても、自分が成長することはいつまでたってもありませんから。

 

多少の失敗は気にしないこと

2つ目は、多少の失敗は気にしないことです。100%うまくいく人なんていません。大なり小なり、失敗はしてしまうものです。ですが、それを糧に人は成長するもの。海岸や河口を彩る玉のような石はどうしてできるのでしょう?水の流れや波に揉まれて、角が取れて磨かれることで、あのような綺麗な石ができるのです。人間だってそうです。「失敗が人間を成長させると私は考えている。 失敗のない人なんて本当に気の毒に思う。」とは、確か、本田宗一郎氏の言葉だったと記憶しています。失敗せずに成長できる人間なんてめったにいるものではありませんよね。

そして、これに通ずることですが、失うことを過度に恐れてもいけません。「何かを失って何かを得ることが、未来に進むということだ」と、ある作家の方がおっしゃってました(名前は忘れてしまいましたが)。私もその通りだと思います。私たちが選択を迫られ、どちらかを選ぶとき、何かを得る代わりに、可能性としてのもう一方を失っているのです。

世界はとどまることをしりません。常に流れ続け、様相を変えていくのです。『平家物語』の冒頭句にも、平泉で芭蕉が詠んだ句にも通底する日本的な無常観で世界を捉える時、失うということが日常茶飯事であることがよくわかります。

うまくいかずに何かを失うことなんて、大なり小なりよくある話です。それでも、メンタルの弱い人には「うまくいかなかったらどうしよう」と悩む傾向があります。それも何か行動を起こしている最中に。そんなことは、考えても仕方のないことです。せめて考えるなら、準備段階でしなければなりません。実際に、何か行動を起こしている最中には、なすべきことに集中してなさなければなりません。

昔、祖父から聞かされました。

「どうして人間には2本しか腕がないと思う?それは、1人の人間が大事に抱えて、持ち続けて守れるもんなんてたかだか2つくらいまでのもんだからだ。」

いっぱい欲しい。何も失いたくない。失うのが恐い。そう思っていた僕に、それでも、本当に持ち続けられるものなどたかが知れているということを気付かせてくれた至言です。1つや2つの、本当に大事なものは失ってはなりません。ただそれ以外の多くのものは、やがては失われるさだめにあるのです。だったら、恐れる必要などありません。そもそも、何かを選ぶときには、選ばなかった方を手放すという意味では、他の何か失ってるわけですから。

失うことを過度に恐れないということは、失うことに対して覚悟を持つということでもあります。昔、ボクシングの元世界王者の辰吉氏が、試合後の腫れた顔を指して、インタビュアーに「痛そうですね。」と言われて、「痛いのが嫌やったら、ボクシングなんてやらんかったらええねん。」といったことをおっしゃっていた記憶があります。生きることも一緒です。失わずに生きることなんて土台無理な話なんですから、覚悟をもって生きましょう。その覚悟があれば、多少のことには動じなくなり、強いメンタルを手に入れることができるでしょう。

 

 

by    tetsu