「思い立ったが吉日」の意味・語源・用例・解釈の思わぬ落とし穴について

「思い立ったが吉日」の意味

成功するためには、「取り敢えずやってみる」ことや「すぐやること」が、時として重要になります。「思い立ったが吉日」と言われるように。しかし、ここにも思わぬ落とし穴が…。きちんと、意味をおさえておきましょうね。

「思い立ったが吉日」の意味と由来

「思い立ったが吉日」とは、「 何か物事に取りかかろうと思ったら、すぐに行動する方が良い」という意味です。

吉日(きちじつ)」は、 暦上、縁起の良いとされる日のことですが、ここで用いられている意味は、単に、「 良い日」と捉えられています。

つまり、解釈すると、「何かをやると決めたのなら、すぐに実行に移すべき」ということですね。これはその通りだと思います。やると決めたのに、いつまでもグズグズしていたって時間のムダです。さらに、何かができる機会が与えられたのであれば、2度と訪れないかもしれないので、早く取り組まないと機会を逃してしまうことにも繋がりかねません。日本人には、とても馴染みの深い言葉ですね。

こうした言葉の解釈におけるメリットやデメリットについては、以前〈すぐやることのデメリット〉や〈取り敢えずやってみる精神〉(リンク×2)についての記事でも取り上げましたが、他にも気を付けなければならないことがあります。これについては、後で解説することにします。

由来については、能の『唐船』という曲目の会話の表現と言われています。

 

「思い立ったが吉日」の用例と類義語

用例

・資格を取るために勉強始めるんだって?思い立ったが吉日だ!今日から頑張りなよ!

思い立ったが吉日と言うし、どうせなら、今から禁煙するか。

・やろうと思ってたあの時に、きちんと防災の準備をしていれば、これほど被害は拡大しなかったんだ。思い立ったが吉日だったんだな…

類義語

・善は急げ

良いと思ったら、迷わず行動せよってことですね。出典は「漢人漢文手管始(かんじんかんもんてくだのはじまり)」という歌舞伎だと言われております。

(※注. もとの題は「漢人韓文手管始」と表記されます)

・今日の一針、明日の十針(とはり)

今日縫えば一針で済んだものを、明日に延ばせば十針かかるということ。そこから転じて、 やるべきことを先延ばしにすると、後々苦労するという意味。

・好機逸すべからず

これはそのままの意味ですね。 良い機会は逃してはならないということ。機会損失にならないためにも、できることはなるべく早く取りかかった方が良いですもんね。

・鉄は熱いうちに打て

鉄は熱して熱いうちに打って鍛えよという表現。そこから転じて、 人は若くて吸収力のある時に鍛えて伸ばした方が良いという意味。または、 物事は熱意がある早い内から取りかかった方が良いという意味。

・奇貨居くべし

珍しいもの(奇貨)は、買って置いておけば、後になれば値が上がっていくということ。そこから転じて、 良い機会は逃さず利用した方が良いという意味。出典は『史記』。「呂不韋伝(りょふいでん)」の故事の一節が由来であるとされています。

・旨い物は宵に食え

おいしい物は、翌日には味が落ちるから、夜のうちに食べた方がおいしく食べられるということ。そこから転じて、 良いことは間を置かず、早く取りかかった方が良いという意味。

・足下から鳥が立つ

足下から、急に鳥が飛び立つ慌ただしさを表しています。少しニュアンスは違うかもしれませんが、 急に思い立って慌ただしく行動を起こすという意味では、早くにとりかかることに通じる捉え方と言えるでしょう。

 


「思い立ったが吉日」の解釈の落とし穴

解釈の落とし穴

確かに、物事はすぐに取りかかった方が良い場合もあります。「思い立ったが吉日」という言葉は、その一面を如実に表しているとも言えます。ですが、その解釈には気を付けた方が良いことも…。どれほど優れた教訓でも、きちんと捉えられなければ、意味がありませんからね。

人は与えられた言葉の後ろの部分に強く印象づけられることが多いです。同じ人物画を表す時でも

①今は立派な教師だが、昔は非行に走っていた人物

②昔は非行に走っていたが、今は立派な教師をしている人物

という2つの表現では、②の方が良い印象を持たれやすいですね?これは逆を言えば、前に述べた言葉の印象が薄れやすいということなんです。

さて、問題の言葉をみてみましょう。「思い立ったが吉日」についても、同じことが言えます。「吉日」のところばかりに目がいきやすく、「思い立ったが」の条件については、あまり考えられることがありません。

言ってしまえば当たり前のことなんですが、「思い立ったが吉日」ということは、「思い立たなきゃ吉日とは限らない」ということです。これは結構、見落とされがちですね。

 こうした問題は、以前書いた「塵も積もれば山となる」についての記事でも取り上げています。

「塵も積もれば山となる」の良い意味・悪い意味と誤用について

だまされないために

では、「思い立たない」とはどういう状況か?人に言われてやる状況などがそれに当たります。

例えば、人に勧められたビジネスなんかを考えてみましょう。「絶対に儲かるから!」などと言われて、大した集客見込みもないのに、ネットビジネスを始めたり。勧められるがままに、何十万円もする情報商材に手を出してみたり。

これらすべてが悪いとは思いません。もちろん、きちんとしたビジネスもあるでしょう。しかし、人から言われて断りきれず、大金を払ってまでやることに、どれほどの意味があるでしょう?

自分から思い立って行動する分には何の問題もありません。自らの意志で未来を切り開いていこうとする姿勢は素晴らしいと思います。でも、自ら考えることをせず、何かに頼ろうとする心につけこんでくる人もいます。

だまされやすい人は、自ら考えることをしません。異なる見方をすると、だまそうとする人間は、考える暇を与えないように誘導してくるということです。

だまそうとする人間に限って、「善は急げ」だの「思い立ったが吉日」だのと、誘ってくるでしょう。しかし、こうした言葉が与えてくれる教訓というのは、 単に急げば良いということではないのです。

本当に誘う相手のことを思いやっているのなら、急がせようとはしませんし、きちんと準備できるように配慮するはずです。それを踏まえた上で、自ら考え行動するということを心がけると、ヘタにだまされる危険性もなくなるでしょう。

by    tetsu