チームワークの本当の意味について―チームとグループの違い

君たちは強い

『SLAM  DUNK』において、安西先生が、赤木、三井、宮城、流川、桜木たち湘北高校バスケ部員に向けた言葉です。作品の後半で、彼らは、無敗であった山王工業相手に、インターハイにて、接戦の末に下します。安西先生の言う通りですね。「君たちは強い」。個々の能力では、どちらかと言えば、やや見劣りする湘北が山王に勝ったのも、チームワークのなせる業と言えるでしょう。今日はそんなチームワークのお話。

 


チームワークの本当の意味について

チームとグループの違い

チームと似たような言葉に、グループというものがありますが、両者は決定的に違います。チームとは、 メンバーが各々の能力を補完しあいながら、同じ目標に向かって行動する、統率の取れた集団を意味します。片や、グループには、そういった共同性はありません。単に、 属性(恣意的に与えられる場合を含む)や嗜好性が似通ったメンバーによって構成される集団を意味します。

ですから、同じ目標を与えると、その達成度には、差が如実に現れるでしょう。なぜなら、お互いを補完し合いながら進めるチームは、 目標達成のために効率化された集団と言うことができるからです。

何か物を売るにしても、企画が得意な人と物作りが得意な人、広報や営業が得意な人からなるチームの方が、企画が得意な人だけからなるグループよりも、より多くの物を売ることができますもんね。

 

チームワークとは

チームワークとは、 「同じ志や目標を持った人間同士が、共通した目的達成のために、お互いを補完しあい、共同で事にあたるさま」をいいます。スポーツだけではなく、仕事においても、チームワークは欠かせません。

チームワークの優れた点は、お互いを補完し合えるというところ。同じ目的達成のために協力して事にあたれるので、平たく言えば、得意なことだけ自分でやって、苦手なところは人任せにできるのです。だから、当然、効率良く、事を進められる。結果、1人では到底なしえない大きな仕事もこなすことができるわけです。

ただ、チームワークがあっても、統率の取れていないチームでは、仕事の効率化は機能しないので、気を付けなければいけません。統率の取れていないチームは、ただの烏合の衆と化し、仕事は進まず、たった1人の仕事量にさえ及ばなくなるでしょう。統率の取れたチームを作るためには、同じ目的のために動いているという意識を各々が共有し、個人の持てる能力を発揮しようと努める姿勢が求められるのです。

 


チームワークにとって不可欠なこと

大きな仕事をなしうるチームですが、きちんとしたチーム作りをするためには、欠かせないことが、主に3つあります。

1つ目が、役割分担。大きな仕事をするためには、チーム内において、どのような役割が必要かを分析し、個人に割り振ることが求められます。この割り振りがうまくなされないと、各々の負担に偏りが生じ、不平不満が生まれ、チーム内に不和が生じることになります。こうなると、チームは空中分解することになりかねません。

2つ目が、リーダーがいること。どれほど個々の能力が長けたメンバーが揃っていても、同じ方向を向いて協力し合わなければ、大きな力は生み出せません。そのためには、統率力のある人物、つまり、リーダーが必要となるわけです。湘北バスケ部でいうところの、赤木キャプテンみたいな人が。

3つ目が、適材適所。せっかく揃ったメンバーも、各々の一番得意とする役割を担わせなければ、意味がありません。それぞれが得意とする能力を発揮して、苦手とする部分を、お互いに補完し合うことで、チームはより大きな推進力を得るのです。そのためには、個人の「何をしたいか?」という意志が問題なのではなく、「何に合っているか?」という適性が重要になってくるのです。

細かい話をすると、他にも、メンバー間の報告・連絡・相談が必要だったり、目的達成のための道標を示す指揮者が必要だったりしますが、強いチームを作るためには、適材適所による役割分担と、統率力のあるリーダーの存在が何よりも必要不可欠となるのです。

 


最後に

強いチームとは、どういうものか?それは『SLAM  DUNK』作中において、湘北バスケ部に対する言葉に表れていると思います。

もはやインサイドを固めて赤木をつぶしさえすれば勝てるチームではなくなった
外から射抜く三井がSG(シューティングガード)に
中でも外でも点がとれる攻撃(オフェンス)の鬼流川がSF(スモールフォワード)
そいつらにパスを出せて自分も切り込める宮城がPG(ポイントガード)
そして一気にリバウンド王にのし上がった初心者・桜木をPF(パワーフォワード)に加えてインサイドはさらに強くなった
〈牧の台詞〉

今やっとわかりました
君たちは強い
その本当の意味が…
赤木
三井
宮城
流川
桜木
あの人並み外れた5人がうまく機能したとき
湘北はこんなにも強いチームになることを先生は知っていたんです
〈木暮の台詞〉

(『SLAM DUNK』20巻#171「君たちは強い」より)

※注.()内は台詞のルビを表し、〈〉は説明のための筆者の言葉を表す。

限界ギリギリの三井を支えているのは――
自分のために赤木がスクリーンをかけてくれる…
その一瞬を逃さず宮城がパスをくれるはず…
落ちても桜木がリバウンドをとってくれるはず…
という信頼――
奴は今赤んぼのように味方を信頼しきる事でなんとか支えられている…………
28巻#249「信頼」より

桜木君がこのチームにリバウンドとガッツを加えてくれた
宮城君が
スピードと感性を
三井君はかつて混乱を
ほっほっ……
のちに知性ととっておきの飛び道具を
流川君は爆発力と
勝利への意思を
赤木君と木暮君がずっと支えてきた土台の上に
これだけのものが加わった
それが湘北だ
〈安西先生の台詞〉
30巻#267「選手生命」より

以上の言葉をみると、適材適所による役割分担(各々のポジション)と、統率力のあるリーダーの存在(赤木キャプテン)、さらには偉大な指揮者(安西先生という指導者)の存在という、強いチームのための条件を満たしていることがわかりますね。そうしたチームが持つ、強いチームワークが、最初は不可能と思われていた絶対王者・山王工業を倒すという奇跡を演じる原動力となったわけです。

バスケのことがわからない人でも、人体を例に考えれば、おわかりでしょう。私たちの身体には、生きるという1つの目的のために、心臓があり、肺があり、血管があり、胃腸やその他の臓器があり、脳がそれらを統率する。それぞれの役割を果たし、機能しているから、生命を維持するという奇跡を実現しているのです。

たちは強い

この言葉の本当の意味を理解し、実践できるならば、私たちは1つの奇跡を生み出すことができるかもしれません。

by    tetsu