ビスマルクの格言「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」が本当に正しいか考えてみた

初代ドイツ帝国宰相であるオットー・フォン・ビスマルクは、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という格言を遺しました。

とても有名な格言なので、多くの人が知っていることでしょう。しかし、その意味は本当に正しいのでしょうか?

というわけで、今回は「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という格言を考えたいと思います。

この記事で分かること
・直訳と一般的な日本語訳との違い
・愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶの意味
・本当の賢者と愚者の特徴

ドイツ語の原文

オットー・フォン・ビスマルクは、ドイツ人なので、当然原文はドイツ語です。

まずは、原文から考えたいと思います。

上記を直訳すると、次のような意味になります。

愚者だけが自分の経験から学ぶと信じている。私はむしろ、最初から自分の誤りを避けるため、他人の経験から学ぶのを好む。

引用:Wikiquote

この直訳を見た後に、一般的な日本語訳である「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」を考えると、違和感に気付くと思います。

ビスマルクは経験からの学びを否定しているわけではありません。

自分の誤りによる遠回りをさけるために、他人の経験から学ぶことを好んでいるのです。

これは、日本の武道の心得である「守破離」の精神にも通じる部分があります。

ちなみに、守とは、師匠に教えられた型を守ることを意味します。破とは、その型をあえて破ることを意味します。離とは、師匠から独立し、自分の型を身に着けることを意味します。

経験に学ぶとは?

経験に学ぶ」とは、自分が経験から学ぶということです。

分かりやすいように、2つほど例(スノーボードと建築)を挙げましょう。

レッスンも受けず、参考書も読まず、スノーボードを始めてもなんとか滑れるようになります。これは、まさに経験に学ぶと言えますね。

当たり前のことですが、上達の効率はあまり良くありません。下手すれば、変な癖がついてしまうリスクさえあります。

自分で家を建てたいと考えたときに、書籍や他人に頼らずに一からを家を建てようとしたって失敗することは目に見えていますよね。

仮に成功したとしても、莫大な時間と労力を無駄にすることになるでしょう。

一言ポイント
愚者は全て経験から学ぼうとするため、莫大な時間とお金を無駄にしてしまう。

このように、常に自分の経験からしか学ばない者のことをビスマルクは愚者と呼んだのです。

歴史に学ぶとは?

「歴史に学ぶ」とは、過去の知見(=歴史)から学ぶということです。

先ほどと同様に、スノーボードと建築を例に挙げて考えましょう。

参考書を読んでレッスンを受ければ、一日でスノーボードの基礎は身に付きます。これは、まさに歴史(=他者が経験したこと)に学ぶと言えます。

こちらのほうが効率が良いのは明らかです。

また、自分で家を建てたいと考えるなら、大学に通い基礎的な知識を身に付け、大工さんに指導してもらい実践的な知識や技能を身に付けますよね?

そうすれば、質の高い家を短期間で作れるようになります。

そのため、「賢者は歴史(=他人の経験や学術的な知識)に学ぶ」と言われるわけです。

一言ポイント
賢者は、出来る限り過去の知見を活用している

経験に学ぶことは本当に愚者がすることなのか?

世の中には、経験しないと学べないことも存在します。

先ほど示したスノーボードの例や建築の例なら愚者と呼べるかもしれません。お金を出しさえすれば、より効率よく学べるわけですからね。

しかし、経験しないと学べないことがあるのも事実です。知覚・直感・メンタルなど

例としては職人が挙げれられるでしょうか?

職人は己の研ぎ澄まされた知覚・直感によって、常人には成し得ない作品を作り上げます。その領域にたどり着くためにはひたすら修行があるのみです。それは、まさに経験に学ぶと言えるでしょう。

もっと身近な例で言えば、自身の体調変化が挙げられます。

私には自分の中だけで通用する風邪の前駆症状があります。手足がひりつくとかつばを飲み込む際に微妙な違和感をかんじるとかね。

皆さんにもそういった例ってありませんか?それもまた経験に学ぶと言えるでしょう。時として、それは一般的な判断基準よりも正確だったりします。

また、メンタル面もそうですね。こればかりは実際に体験してみないとわかりません。仕事が上手くいった時の達成感とか別れの喪失感とか。

事前に周りの人からその感情について語られても、やはり自分が経験しないと真には分からないものです。そして、そういった経験を通じて人は成長していくものだと思います。

つまり、経験に学ぶことも歴史に学ぶことと同様に大事なわけです。もちろん、歴史に学べることを経験に学ぶことは愚かなことですけどね。

実際、賢者の英訳は「wise old man」ですからね。おそらく、お年寄り=経験豊富=賢者という考えから来たのでしょう。そう考えると、経験に学ぶこともまた賢者の構成要件になるわけです。

一言ポイント
本当の賢者は歴史から学び、学べない部分は経験で補完できる人

直訳文を読むと分かるように、ビスマルクも経験から学ぶこと否定していません。

本当の愚者は歴史からも経験からも学ばない

本当の愚者は歴史からも経験からも学びません。

予めの注意すべき点を教えてもらったのに、その点で失敗してしまう。(=歴史に学べていない)

その上、同じ失敗を繰り返してしまう。(=経験に学べていない)

まさに仕事が出来ない人の特徴です。これと比べると、経験から学んでいるだけでも、まだましと言えるかもしれません。

一言コメント
本当の愚者は、歴史からも経験からも学ばない

まとめ

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶは本当か?と聞かれると、私は違うと考えます。

ドイツ語の直訳文をみても経験に学ぶことを否定していませんしね。

要は、賢者は歴史にも経験にも学ぶからです。

もちろん、前例があれば歴史から学ぶべきです。しかし、世の中の全てを歴史から学ぶことはできません。そのような場合には、当然経験から学ぶ必要があります。

一方で、愚者は賢者の正反対です。つまり、愚者は歴史にも経験にも学ばないと言えます。

確かに、人の注意を聞かずに失敗して、さらにその失敗を繰り返す人はまさに愚者ですからね。

まとめ
本当の賢者:歴史にも経験にも学ぶ
本当の愚者:歴史にも経験にも学ばない