私たちは、討論番組や2chやSNS上での論争など、様々な場所で議論を見ています。
中には、詭弁を使って相手を嵌めようとする人もいます。
そんな詭弁の中でも特に有名なのが「ストローマン論法」です。日本語だと「藁人形論法」です。
今回はそんな「ストローマン論法」の具体例とその対処方法について解説します。
・ストローマン論法の具体例
・ストローマン論法の使い方と見分け方
目次
ストローマン論法とは?
ストローマン論法とは「相手の意見を歪めて反論する行為」です。
その具体的な手段は次の通りです。
-
議題の歪曲
議論の対象になっている言葉を歪曲することにより、反論を容易にします。これにより、相手の意見を歪めることができ、反論が容易になります。こちらは、SNSや2chでの議論・言い合いの場合によく見られます。 - 表現の歪曲
言葉の表現を歪曲することにより、反論を容易にします。例としては、「制限する」→「禁止する」、「多くの~」→「すべての~」、「支持する」→「絶賛する」など様々なものが挙げられます。このように、表現を強調することにより、相手の主張を歪めることが出来ます。 - 発言の切り取り
この方法は、主張の文脈をとらえずに、意見の言葉尻をとらえて反論する方法です。この方法は、相手が反論しづらい環境の場合に極めて有効です。そのため、TVやニュース記事など一方向型のメディアにてよく見られます。
あからさまに意見を歪めてしまえば、上記の手法も相手や第三者に気付かれてしまいます。
そのため、歪曲の匙加減が重要となります。
ストローマン論法の例文
今回は、分かりやすいストローマン論法の具体例をご紹介します。
議題と表現の歪曲の例
A「子供のSNSサービスの利用には制限を課するべきだ」
B「子供をインターネットに触れさせないなんて時代錯誤も甚だしい。そのような考えがあるから、日本のIT技術は諸外国に後れを取るようになったのだ。」
上のやり取りには、議題と表現の歪曲が含まれています。
ここでの議題は「子供のSNSサービスの利用制限するべきか?」というものです。
しかし、Bさんはその議題に対して「子供をインターネットに触れさせないことは時代錯誤」と主張しています。
こう見ると、「SNSサービス」が「インターネット」という大きな言葉に入れ替わっていることが分かります。
これは議題の歪曲に該当します。
また、「利用制限」という言葉が「触れさせない」という言葉に変化しています。
これは、表現の歪曲に該当します。
このように、議題や表現を歪曲することにより、議論を優位に進めようとするのです。
発言切り取りの例
A「最近の子供同士いじめ問題は深刻だ。中には、学校の先生などにSOSを出しているのにも関わらず、無視されるケースもあるのだとか…また、教育委員会が自己保身のために、いじめの事実を隠蔽するケースもあると聞く。」
A「このような話ばかり聞くと、我が子のことが心配で学校に行かせたくなくなる。」
B「こどもを学校に行かせたくないとはなんたることか。」
B「国民の三大義務の一つである教育の義務(憲法第26条2項)には、「その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。」とある。つまり、保護者であるあなたには教育を受けさせる義務があるのだ。その義務を果たそうとすらしないその姿勢は、断罪されるべきものだ。」
これも、典型的な発言の切り取りですね。
Aさんの「子供同士のいじめ問題に不安を覚えて、安心して学校に行かせたくない」という発言の「学校に行かせたくない」の部分のみを切り取り、意見に対する反論を容易にしています。
Aさんは学校教育に対する漠然とした不安や不信感を述べているのに対して、Bさんは発言の一部を切り取り、その点から相手を論破することを試みています。
基本的に、詭弁を用いた論争には生産性が一切なく、互いの心証を悪くしてしまうだけです。
しかし、論破のためのツールとしては有用なので、なかなか無くなりません。
ストローマン論法の見分け方と対処法
自分の主張を認識できていれば、ストローマン論法は簡単に見抜くことができます。
そうすれば、議論を軌道修正することができ、元の議論に戻ることができます。
無意識にストローマン論法を使用してしまう方もいるので、事前対策として議題を明確化することも大切です。
議題が歪められていないか?
議題の歪曲に気付くためには、常に「何について話しているか?」ということを意識する必要があります。
議題を意識していれば、相手に歪められたとき瞬時に気付くことができ、「あなたの主張は議題からずれています。」と議論を軌道修正することができます。
また、自分が議論したい内容を再度提示することも大切です。
具体的な対処例
A「子供のSNSサービスの利用には制限を課するべきだ」
B「子供をインターネットに触れさせないなんて時代錯誤も甚だしい。そのような考えがあるから、日本のIT技術は諸外国に後れを取るようになったのだ。」
A「私はインターネットについては議論していない。私が議論しているのは、SNSサービスについての議論である。」
以上のように、議題を正しく修正することにより、ストローマン論法を破ることができます。
ですから、常に何について議論しているか?と意識するべきなのです。
表現が歪められていないか?
表現の歪曲に気付くためには、常に表現の強弱を意識する必要があります。
もし、相手の言葉表現に問題がある場合は、「表現の齟齬があるようです。私は禁止ではなく制限と言いました。」という具合に表現を修正して、議論を修正すると良いでしょう。
具体的な対処例
A「子供のSNSサービスの利用には制限を課するべきだ」
B「子供をインターネットに触れさせないなんて時代錯誤も甚だしい。そのような考えがあるから、日本のIT技術は諸外国に後れを取るようになったのだ。」
A「私はインターネットについてではなく、SNSサービスの利用について議論している。また、禁止(触れさせない)ではなく、あくまで制限の是非について議論したい。」
以上のように、表現を修正することにより、議論の軌道修正を行います。
ですから、表現の齟齬が起きていないか?ということも意識しておくべきです。
発言が切り取られていないか?
発言の切り取りに気付くためには、自分の主張全体をキチンと把握しておく必要があります。
そうすれば、自分の発言の一部が切り取られたことに気付くことができます。
切り取りに気付いたら、自分の発言の一部が切り取られていることを主張すると良いです。
そして、自分が議論したい内容を再度提示すると相手も議題を理解しやすいです。
具体的な対処例
A「最近の子供同士いじめ問題は深刻だ。中には、学校の先生などにSOSを出しているのにも関わらず、無視されるケースもあるのだとか…また、教育委員会が自己保身のために、いじめの事実を隠蔽するケースもあると聞く。」
A「このような話ばかり聞くと、我が子のことが心配で学校に行かせたくなくなる」
B「こどもを学校に行かせたくないとはなんたることか。」
B「国民の三大義務の一つである教育の義務(憲法第26条2項)には、「その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。」とある。つまり、保護者であるあなたには教育を受けさせる義務があるのだ。その義務を果たそうとすらしないその姿勢は、断罪されるべきものだ。」
A「発言の一部を切り取って反論しないでいただきたい。文脈をたどれば、教育機関に対する不信感と分かるはず。今は教育の問題について意見を交換したい。」
このように、「発言が切り取られていること・議題を明らかにすること」で発言の切り取りを指摘することが出来ます。そして、自分が議論したい内容を提示すると良いでしょう。
ただし、テレビなどの一方向メディアで発言の切り取りが行われた場合は、反論の機会が与えられないので、不利な状況に陥りやすくなります。
ですから、メディアのインタビューを受ける際は発言に細心の注意を払う必要があるのです。
まとめ
ストローマン論法の定義
「相手の意見を歪めて反論する行為」を意味しており、詭弁の一種です。相手の意見を歪めることにより、反論を容易にします。
ストローマン論法への対策
基本的に、ストローマン論法は以下の3つに分類することが出来ます。ですから、①~③のような行為が行われていないか?ということを意識すると良いでしょう。
-
議題の歪曲
-
表現の歪曲
- 発言の切り取り
また、無意識にストローマン論法を使用してしまうケースもあるので、そのようなことがないように、議論の議題は常に明確にすることを意識しましょう。そうすることで、無意識的で悪意のないストローマン論法を防止することができます。
生産的な話し合いをするために
ストローマン論法が使用されると、話し合いは生産的でなくなります。議論の目的が課題解決から議論での勝敗に変化しますからね。
ですから、ストローマン論法は意識的に使用しないようにする必要があります。
また、ほかにも生産的な話し合いをするために意識するべきことがあります。それが気になる方は次の記事を読んでいただくと良いと思います。
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