どうやって塾を選ぶべきか?塾選びのために知っておくべき塾の特徴

全国にある塾の件数はコンビニと同じくらいあります。

これだけ数が多いと、我が子をどの塾へ通わせれば良いかがわからなくなります。

子どもの成績を伸ばすためには、その子に合った塾選びが重要です。

それを判断するためには、塾の性質を知る必要があります。しかし、1つ1つ塾を調べるのは大変です。

そこで、20年近く塾業界に携わっている私が塾選びのために知るべきポイントについて解説します。

今回は、塾の種類について説明していきます。一口に塾と言っても、その種類は様々。

大企業の経営する大手塾もあれば、個人経営の個人塾もあります。

また、集団指導のものや、少人数指導個別指導などもあります。

それぞれの特性を把握した上で、塾を選ぶ必要があります。

大手塾と個人塾

塾には大手塾と個人塾があります。大手塾に通わせれば安心と考える方も多いです。

しかし、子どもの成績を上げるのに、どちらが良いかと一概にはいえません。

子供の性格や学習スタイルに合うタイプの塾を選択することが大切です。

大手塾の特徴

大手塾のメリット

1.豊富な情報量

大手塾の強みと言えば、何といっても情報の豊富さです。

規模が大きいので、情報が集まりやすいのです。

例えば、各学校の過去問研究などは十分に行われているため、傾向対策を立てたり、どの程度の成績で合格できるか?といったことがわかりやすいため、戦略的な指導が可能になります。

そのため、志望校別のクラスがあり、特に有名校に合格するためのノウハウが揃っています。もちろん、日頃の定期テスト対策についても言えます。

このように、これまでの受験対策、定期テスト対策に関する指導実績や経験から、様々な情報を蓄積させています。そのため、効率的な指導が可能なのです。

2.講師の平均的な質が高い

講師の質は、高い傾向にあります。

塾によっては、旧帝大縛りなど、採用基準に出身校の制限があるくらいです。さらに、採用試験に模擬授業があり、研修制度がある場合もあります。そのため、講師の質は高くなります

とはいえ、講師本人の学力と指導力に開きがある場合もあります。優秀なプレーヤーが優秀な指導者になるとは限らないわけです。

ですから、塾選びの基準として、鵜呑みにしてはいけません。それでも平均値は高めなので、その点はご心配なさらずに。

3.切磋琢磨できる

大手塾は通う生徒数が多いので、自然と友人関係を築けます。

それにより、競争意識が芽生え、お互いが刺激し合い、切磋琢磨できます。

4.通塾環境が良い

通塾環境が良いというのも、大きなメリットです。

親御さんの身としては、子どもの行き帰りが心配になります。

ですが、交通の便が良いことが多く、バスによる送迎付きのところもあります。それに、子どもの入・退室の記録をメールで知らせてくれるところもあります。

大手塾のデメリット

1.小回りが利かない

大手は規模が大きいことから意志決定が遅く、柔軟な対応が取りにくいです。

決められた予定通りに動いているからこそ、規模が大きくても運営できるわけですからね。

例えば、受講教科やコマ数の微調整などは、個人塾の方がフレキシブルです。

2.合格実績が第一

大手は合格実績作り第一が多いです。

それが需要として求められているので、仕方ありませんが…

そのため、集団指導であれ個別指導であれ、優秀な講師は優秀な生徒を担当するケースが多いです。

また、合格実績作りのために、本意でない受験を勧められる可能性があります。

不確実な学校を受けるよりは、受かる学校を受験する方が実績作りには好都合ですからね。

個人塾の特徴

個人塾のメリット

1.地域密着型という強み

個人塾の強みと言えば、地域密着型

地域性に特化しているというのが一番大きなメリットです。

そのため、効率的な定期テスト対策が期待できます。学校の特色まで把握している塾もあります。塾によっては、学校の先生の出題傾向まで分析しているところもあるくらいです。

2.サポートが丁寧

個人塾は小規模であることから、個々に対する対応が丁寧です。

授業計画の相談や進路指導なども、各生徒の要望にフレキシブルに応えてくれます。

親身になってサポートしてくれるというのが、個人塾の大きなメリットです。

3.情熱的な講師が多い

個人塾には、情熱的な講師が多いです。

まあ個人で塾をしている人ですから、教育に対して、余程の情熱がなければつとまりません。

親身になってくれる分、生徒のやる気を引き出そうと尽力してくれます。

4.生徒本位

個人塾では、講師と生徒の距離感が近くなります。

ですから、コミュニケーションが活発で、意思疎通がはかりやすい。

もちろん、大手塾でも生徒のことを考えてはくれます。

しかし、規模が小さい分、個人塾の方が、生徒本位で動くことができます

実績作りというよりも、生徒(あるいは親御さん)の意志を尊重してくれる傾向にあります。

個人塾のデメリット

1.情報量が少ない

これは避けられないデメリットです。

個人塾は規模が小さい分、大手に比べて、情報の蓄積量が少なくなることは否めません。

特に、受験情報に関しては顕著です。

2.講師の実力差にバラつきがある

個人塾の講師の指導力にはバラつきがあります。

大手塾ほど厳しい採用基準がなく、研修制度も不十分だからです。

中には素晴らしい講師の方もいますが、大手塾の講師の指導力と比べると、見劣りします。

よくある誤解

両者のデメリットについて、次のように説明されている場合があります。

しかし、私の指導経験上、明らかに合致しないと思われるものが見受けられます。

ここでは、その部分について補足をしたいと思います。

大手塾は指導力にばらつきがある

大手塾のデメリット:「校舎や教室によって指導力にバラつきがある」

これは正しいとは言えません。確かにバラつきはあります。

ですが、デメリットと言えるほどのバラつきなどありません。むしろ逆で、厳格な採用試験や充実した研修制度により、大手塾の指導力は高いレベルで均質化されています。

私自身が指導していた時は、旧帝大出身者の講師の方が多数いました。もちろん、コミュニケーション力を含めて、指導力も高い人たちです。バラつき自体はどこにでもあるもの。それは大手塾であろうが、個人塾であろうが例外はありません。

個人塾は競争心が生まれにくい

個人塾のデメリット:「生徒のペースに合わせて指導が行われるため、競争心が生まれにくい」

これも適切な表現とは言い難いです。

確かに、「生徒のペースに合わせて指導やフォローが行われる」というのはその通りです。だからと言って、「競争心が生まれにくい」とは、必ずしも言えることではありません

私自身が個人塾で指導していた時は、生徒に競争心はありました。これには個人差が多分に含まれており、指導する側の意識の問題です。

良い意味で競争心を煽ることはできますし、万が一、競争心が生まれにくいとしても、向上心を育むことはできます

それ故、「生徒のペースに合わせた指導やフォロー」がデメリットには繋がりません。

個人塾は実績が少ない

個人塾のデメリット:「実績が少ない」

これはとんでもない偏見です。

個人塾だからといって、「実績が少ない」ということは決してありません。

難関国立大学医学部を専門に扱っていた個人塾もありましたし、私自身が個人塾に勤めていた時は、国公立大学や難関私立大学への合格者を毎年輩出していました。

単純な実績の数は少ないですが、それは大手塾と個人塾の経営規模が異なるからです。

生徒数全体における実績の割合を示す合格率にそれほど違いはありません。

知り合いの講師からの経験談や私自身の経験上、個人塾の方が実績の良い年度もあるぐらいです。

デメリットに囚われない

大切なのはデメリットにとらわれることではありません

それぞれのメリットを活かせるような付き合い方だと思います。

子どもの個性を考え、どちらが向いているかを判断し、目的とする学習のためにどちらかを選ぶ、あるいは掛け持ちをして利用すれば良いのです。

大手塾と個人塾の比較

以上が大手塾と個人塾のメリット・デメリットです。

双方に、メリットもあればデメリットもあります。どちらが良い、悪いという話ではありません

大切なのは、生徒側が何を求めているかということ。ニーズに合致する方を選べば良いのです。

両者のイメージは、大手塾は引っ張っていく感じで、個人塾は押し上げていく感じです。

大手塾には、十分な経験や実績からくる情報が豊富にある分、そういった情報を指針とした指導が行われる傾向にあります。

ですから、ついて行く地力のあるお子さんには大手塾が向いています。特に、難関進学校への受験対策にはもってこいです。

逆に、ついて行くことが難しいお子さんには向いていないのかもしれません。

かたや、個人塾は生徒本位で物事を考えてくれるので、ついて行くことが難しいお子さんには個人塾が向いています。

カリキュラムなども柔軟に対応してくれる可能性が高いので、苦手科目の克服や、成績の平均的な底上げを目的とするなら、個人塾がオススメです。

指導形態(指導人数)

続いて、指導形態についてです。

指導形態は受講する生徒の指導人数によって分けられます。

基本的には、 10人以上を指導する集団指導と、 1~3人までを指導する個別指導に区分されますが、 4~8人ほどを指導する少人数制というものもチラホラと見受けられます。

それぞれのメリット・デメリットについて説明していきます。

集団指導の特徴

集団指導のメリット

1.周りからの刺激を受けやすい

集団指導では周りに人がいるので、気が引き締まります

特に、雰囲気の良い授業では、良い影響を受けやすくなります。

一人ではやる気が出にくい人には向いています。

2.効率的なカリキュラムが組まれている

特に、受験対策について言えることですが、年間カリキュラムが効率的に組まれています。

ついて行くことさえできれば、高確率で目標達成ができます

3.授業料が比較的安価

個別指導に比べると、費用は安くてすみます

経済的な観点でかんがえると嬉しいですね。

集団指導のデメリット

1.柔軟なカリキュラムが組めない

実績や経験に裏打ちされた情報から、目標達成のための年間カリキュラムを効率的に組み立てています。部活や他の習い事などの個人的な予定に合わせて柔軟に対応するのが難しいです。

これを無理にこなそうとすると、心身共にかなりの負担を強いることになります。

せっかく充実したカリキュラムもこなせなければ意味がありません。

2.一度つまづくと挽回するのが難しい

一度つまづいてしまうと、挽回するのは難しくなります。

たとえ、個人がつまづいてしまっても、全体としてのカリキュラムは進められます

それに、講師と生徒間の距離感も近いわけではありません。つまづいたところを気軽に質問したりして、柔軟な指導が行われるわけではありません。

ですから、消化不良のまま、今後のカリキュラムをこなしていかなければならなくなります。そういったことが続くと、学習効果は低下します。

それでは、せっかくの素晴らしいカリキュラムも台無しになります。

そして、一度ついていけなくなると、取り残された感を味わうことになります。

個別指導の特徴

個別指導のメリット

1.個人に合わせたカリキュラム

個別指導の最大のメリットです。個人に合わせた柔軟なカリキュラムです。

目標達成までの予定を、生徒中心に組み立てるので、苦手科目があっても、問題なくこなせます。

弱点となる分野なども、補強しながらカリキュラムを組んでいくので、効率よく学習できます。

また、生徒本位で予定を立てていくので、部活や他の習い事も並行してこなせますし、個人的な事情による予定変更も、柔軟に対応してもらえることが多いです。

2.つまづきにくい

わからないところを、その都度訊きながら授業が進められるので、つまづくことがありません。また、過去につまづいたところがあっても、遡って復習するので、学習効果は高まります。

個別指導のメリットは何と言っても、柔軟で手厚い対応をしてもらえるという点に尽きます。

個別指導のデメリット

1.料金が比較的高い

これは家庭教師にも、厚遇されるので料金は、集団指導に比べると、高めに設定されます。

個別指導という特性上、仕方のないことではあります。

2.生徒と講師の馴れ合いになる可能性がある

個別指導は集団指導に比べると、生徒と講師の距離感が近いです。

だから、場合によっては、生徒と講師の馴れ合いになる危険性は否定できません。

まあ個人的な経験からは、きちんとしている塾においては、あまりみられません。

3.うるさく感じる人もいる

個別指導は、同じ講師が数人受け持ち、同じコマ数の中で授業を展開します。

個室があるわけではなく、席はパーテーションで区切られている程度なので、どうしても話し声は聞こえてきます(質疑応答や解説を含めて)

そういった講義が複数展開されると、それなりの音量になることもしばしば。

ですから、「静かな環境でしか勉強できない」、「集中できない」という人にはあまり向いていないかもしれませんね。それが理由で退塾していった生徒をみたこともありますし。

よくある誤解

個別指導は競争心が生まれにくい

周りからの刺激が少ないため、競争心が生まれにくいのは分かります。

しかし、デメリットとして挙げられるようなことではありません。

なぜなら、周りで同じ授業を受けていなくても、同じ塾に通っている生徒や学校の同級生と競い合うということは十分にできるからです。

私自身の経験から言うと、それは個人差と言っても差し支えないかと思われます。

また、競争心が生まれにくい方でも、良い講師に受け持ってもらえると向上心は芽生えます

それにより、学習意欲はかき立てられますので、個別指導のデメリットとは言えません。

集団指導と個別指導の比較

以上が、集団指導と個別指導のメリット・デメリットです。

やはり大切なことは、それぞれの特徴(としてのメリット)を活かした利用がオススメです。

自分でモチベーションを上げることが苦手。でも競争心が強く、ある程度自立している子ども〉には、集団指導が向いているでしょう。

集団指導に対する不安要素が多く、特定の教科に過去の段階で抜け落ちている分野や単元がある、あるいはついていくことが難しそうな子ども〉には個別指導が向いていると言えます。

当然かもしれませんが、それぞれのメリット・デメリットは相関的に補完し合うようなものになっています。従って、集団指導に通いつつ、不安な教科だけを個別指導で補うというのが、理想だと言えますね。

まとめ

それでは、塾の特徴(メリット・デメリット)を表にまとめておきます。

大手塾と個人塾の比較

集団指導と個別指導の比較

これを参考に、どのような指導法が子どもに向いているかを判断した上で、塾を選ぶようにしましょう。

大切なことは、子どもがその塾に合っているか合っていないか、あるいは、その指導法に向いているか向いていないかを基準に選ぶことです。

by    tetsu