オリンピックの暑さ対策「人工雪」の有効性を中学理科の知識で考えてみる

時事問題

最近、驚きのニュースを耳にした。なんと、オリンピックの暑さ対策に人工雪を降らせることを真剣に検討しているらしい。その一環として、テスト大会の会場で実験を行ったそうな…

もちろん、結果は失敗だ。理由は風が吹いたから。なぜそんなに風が吹いたのかというと海に面していたから…

う~ん…

まぁ、百歩譲って風が吹かなかったとしよう。それならば、充分に気温は下がったのかもしれない。というわけで、今回は、オリンピックの暑さ対策「人工雪を降らせること」が本当に有効なのか中学理科の知識を活用して考えてみたいと思います。

人工雪が空気を冷やす仕組み

固体(氷)から液体(水)、液体(水)から気体(水蒸気)に相変化(潜熱)液体(水)の温度上昇(顕熱)により吸収されるエネルギーによって、空気が冷却されます。そういう意味では打ち水の強化版と言えるかもしれません。言葉だけで分からない人は次の図を参考にしてみてくださいね。

エネルギー吸収量を計算してみる

実験では、5分間で300kgの人工雪を降らせました。この情報から、エネルギー吸収量を計算したいと思います。

先ほどの図に示したように、エネルギー吸収量の総量は融解熱・気化熱・温度上昇によるエネルギー吸収の合計で表されます。簡単のため、ここでは仮定として水温50度で一律に気化するものと仮定します。その条件を基に300kgの氷が気化する計算すると次のようになります。左から順に、融解熱の計算・温度上昇に使われる熱量の計算・気化熱の計算となっています。

333.6kJ/kg×300kg+4.82kJ/kg/K×300kg×50K+2250kJ/kg×300kg

この式を計算すると、847380 kJとなります。そして、空気の比熱は約1kJ/kg/Kです。つまり、847380kgもの空気を1℃下げられるということになります。空気の密度は1.1kg/m3です。この結果を基に計算すると、100m×100m×10mの空間を7.7℃も冷却できるということになります。

この結果を見る限りはかなりの冷却効果が期待できそうですね。とはいえ、比較対象がなければ比較しづらいものです。というわけで、エアコンの冷却性能と比較してみましょう。

エアコンとの比較

10畳用のエアコンの冷房能力は3kW程度です。実験では5分間で300kgの人工雪を降らせました。そのため、今回の実験の冷却能力は847380kJ/300s≒2826kJ/s=2826kWとなるわけです。つまり、一般的な(10畳用)エアコンの冷却能力の942倍もあるということになります。学校用のエアコン(10kW)と比較しても、282倍もあります。想像以上の数字ですね!

そう考えると、人工雪による冷却効果はかなりのものだと言えるでしょう。もちろん、理想的な条件のもとですが…

まとめ

次のような理想的な条件下においては、人工雪における冷却効果が有効であると計算できました。

  • 無風状態
  • 冷気が逃げない
  • 全ての人工雪が50℃で気化する

ただし、現実はそう甘くありません。まさに机上の空論!

当然のことながら、風もあるでしょうし、冷気もダダ漏れです。太陽からの直射日光もあります。また、湿度の高い日本の夏では、すべての水分が気化できるのかも不明です。最悪の場合、湿度だけを供給して体感温度が上昇するだけということも考えられます。

このように、理想的な条件下では効果があるのに、実験をしてみると全く効果が表れないということは往々にして起こり得ることです。まぁ、それが実験の役割でもあるわけですからね。そういう意味では、今回の実験には意味があったと言ってよかったのではないでしょうか?

せめて無風の条件下で実験をしてほしかったなぁ。それなら多少効果が見られたと思うんですけどね~。