その名も「JR」!

ゆる~い系

『オリガ・モリソヴナの反語法』

かれこれ10数年前になるだろうか。日本人作家の面白い本に出会えた。米原万里の『オリガ・モリソヴナの反語法』である。それほど現代の日本人作家の著作を読まないので、なかなかのレアケースと言える。ディテールについては、よく覚えているわけではないが、実に面白かったという記憶だけは今でも辛うじて残っている(そんなわけで、あらすじについても割愛させていただきたい)。

オリガ・モリソヴナとは、ソビエトの学校に出てくる舞踊の教師なのだが、彼女にはちょっとした特徴がある。それは、生徒を叱責する際に、彼女は罵倒せず、大袈裟に褒めそやすというもの。例えば、生徒の踊りのリズムがズレていると、「ズレてるよ」と直接注意するわけではなく、「ああ、この子は何て天才なんだろ!これまでの踊りのリズムという常識にとらわれずに、他の人とは違った独特のテンポを生み出し、昇華させた芸術を体現してしまうんだから!」みたいなニュアンスで。

これ、やられたら恐いよねぇ…。されたことないから実感としてはわかんないけど。例えばあれでしょ?自分の下手くそな絵を、天才だ何だと散々持ち上げられて、本当に上手い色んな絵と共に特別目立つように展示されて、晒し者にされるってことよね?いや、ホント地獄ですよ…。

反語法ってのは、別に、言語学に関する難しそうな概念でも何でもなく、上述したようなオリガ・モリソヴナ的な語法を指すわけだ。つまり、貶すために敢えて一見正反対の意味の言葉を用いて、直接表現するよりも精神的ダメージを与えるような言葉の用い方のことである。以前、言葉狩りについての記事を書いたけど、ホント言葉ってのは表面的なものよりも、その根っこにある心を読み取ろうとすることが大事なんだよねぇ。

何でいきなりこんな話をって?いやね、最近「面白い本ないか?」って訊かれたり、「オススメの本教えて」と言われたりしたことがあったもんだから、読んだこと自体を忘れる前に、記憶ある内に書き留めとこうと思いまして、ね。本当に面白かった記憶があるので、是非とも読んでいただきたい。

え?別に他意はないよ


その名も「JR」!

ま、前置きはさて置き、今日はね、ある鉄道会社について話をしたいんだ。まあきっと恥ずかしがり屋さんだから、直接表記するのはよそう!イニシャルトークだけど勘弁してね!話したいその鉄道会社ってのは…その名もJR(詳しくは言えませんが、西日本にある会社です)。

「何が嫌いかより何が好きかで自分を語れよ」っていうツギハギに漂流した作家の言葉通り、JRの好きなところについて、語っていこう!社会に欠かせないインフラとして機能するこの会社に敬意を表して。

 

①時間に縛られないところ

何つったってまずはコレ!時間に縛られないところ!雲のジューザより自由なところ。J・S・ミルの『自由論』そこのけに自由なところ。だいたいさぁ、時間に几帳面過ぎるのよ。日本の鉄道って。たった数分遅れただけでも、車内アナウンスで「誠に申し訳ありません」なんて丁寧に謝罪してくれるわけですよ。いやいや、別に構いやしませんて。たかだか数分遅れただけで目くじら立てるような人はいないでしょ。それほど寸暇を惜しむなら、もっと余裕をもって行動しますよ。

でも、謝る割には自由なんだよね。時間に関して。どれくらい自由かって?まあ少なくとも一週間に何度も遅れるくらいでさあな。その内、月に何回かはまあまあな時間遅れるんだよね。こないだなんてさ、遅れ過ぎて、逆に時間通りに来ちゃうなんてことがあってさ。時間通りに来たもんだから、気付かなかったよ。実はその電車、1時間前の電車だったんだね。一周して、逆に時間通りに来てるように見えたっていう…。こうなったらもう車内アナウンス、少なくとも駅構内アナウンスでは謝る必要ないよ。だって時間通りだもん。

外国では、電車が数時間遅れたりするのなんてよくあることらしいし。いいじゃないの。30分遅れなんて。気にする必要ないよ。他の鉄道が時間に几帳面過ぎるだけさ。たまに、「本当にここ日本だよね!?」なんて錯覚しそうなくらい遅れまくってることもあるけど、時には、時刻表なんかに縛られず、自由にいこうぜ、JR!

 

②無理をしないところ

この鉄道ね、本当に無理をしないの。すぐ止まる。あるいは、徐行。大事だよね、安全。例えば、雨ね。「雨量計が規定値に達したため~」なんて遅延理由や止まる理由をしばしば耳にするの。正直「だから何やねん」と思ってた時もあったけどね。そんな理由は、他の私鉄では一切聞いたことがないしね。そもそも、車が自動運転で走り始め、月や火星に探査機を送り、人工知能が将棋のトッププロを倒すようになったこのご時世において、ちょっとばかり雨が降ったからといって交通機関が止まるてどーゆーことやねんとも思ってたけど。それも大洪水を引き起こすほどの雨量ならわかるけど。まあまあ緩めの雨でもたまに止まるし、遅延するもんね。このハイテクの時代に、いや、だからこそか、安全確認は重要だもんね。

台風の時なんかよくわかるよ。台風の翌日でも、止まってるもんね。他の私鉄は、何なら台風当日でも平気で走ってるのに、JRだけは24時間近く経った翌日でも動かない。安全が大事だからね。

ただ、信号機トラブルに始まり、線路内や踏切付近の安全確認があまりにも多いのもスゴいよね。もはや、「頻繁に安全確認をしなければならないシステム自体に問題があるのでは?」なんて思わせるほどに、安全確認するんだから。「安全を確認する前に、システムを確認して下さい」ってツッコミ待ってんじゃないかってくらい。これからも安全しっかり確認してね。

 

③合理性にとらわれない

資本主義であろうが、社会主義であろうが、行き着くところはある種の合理性。学問はもちろんのことながら、芸術にだって一種の合理性はある。そこにとらわれないってんだから、大したもんだ。いわば、人間の理性的本能を超克するわけだ。どういうことかって?まあ、じっくりと聞いておくんなせい。

改札口を出ると、左右にしか行けないタイプの、よく地下にありがちな駅のお話。最近の改札機には電子マネー専用のものがありまして、切符が使えず、ICOCAやPiTaPaしか使えない仕様となっておりまする。改札付近の通路の構造上、構内を出入りするには、必然的に両端の改札を通るのが一番の近道となるが、紙状の切符を使える仕様の改札機(勿論、電子マネーにも対応)が一番両端にあるのだ。

混雑時などには、当然、電子マネー組は両端にある改札機を使う(まあそこを通るのが一番の近道ですから)。で、端から2番目に電子マネー専用機。電子マネー組は一番の近道である両端の改札機を通るので、紙状の切符乃至回数券で入出場する人は改札機をなかなか通れなくなるの。そこで、切符も使える改札機を利用するためには、最も遠い真ん中の改札機まで行って入った挙げ句、ホームに通じる階段から最も遠い改札機からホームに向かうという意味不明な道順を追わねばならない。んで、両端にある電子マネー専用機は誰も使わず…。通勤通学に定期利用する人は、皆さん「ピッピッ」と電子決済しながら、行くわけよ。実に大勢の人が通り過ぎるのを待ってからしか、切符組は通れない。

これさ、改札口作るとき、容易に想像できるよね?「切符で入出場する人、きっとかなりの時間、通せんぼうされるだろうなぁ」って。「電子マネー専用の改札機、あんまり使われないだろうなぁ」って。逆の構造にしたら(電子マネー専用改札機を両端に設置して、その横に兼用改札機を置けば)、電子マネー組も切符組もスムーズに出入りできるのに。それでも、この非合理的な構造に執着する精神力!無用の長物を愛する心意気!この構造作った人(かチームかは知らんけど)、天才です!不条理の美学って言っても過言じゃない!カミュ先生垂涎ものですよね!

 

④精神修行ができる

大袈裟な話じゃなくってね、JRの鉄道を利用すると、精神修行ができる!乗客にストイックさが求められるわけですよ。極端に言うと、自我を滅却でもしない限り耐えられんのですわ。

例えば、座席。「譲り合っておかけ下さい」と言う割には、7人がけで座るとかなりきつめの仕様。かと言って、6人がけだと、かなりゆったりした仕様。そらまあある程度混雑したら大体7人がけで座るでしょうが、キッツキツですわ。しかも、中にゃ足を無駄に広げたり、ドスンと座って自分の存在無駄に主張したり、キッツキツの中でスマホのゲームで腕をしきりに動かしたり貧乏揺すりしたりする○○がいたりするので(○○のなかなかには好きな漢字を入れてね。ヒント:「馬」か「鹿」の字をどちらかに入れるとわかりやすくなるかもしれないよ!)、そらまあイライラは安室奈美恵のバックダンサーよりもMAXですわ。後30cm座席スペースを広げれば、すし詰め状態になることなく7人座れるのに。これってストイックに譲り合えってことよね?ちなみに阪急や京阪などの私鉄ではこんなことはないです、はい。様々な賢い工夫が随所に見受けられるのです、はい。でも、そんな甘えは許さないって感じがJR!強さを求めるジャック・ハンマー並みにストイックさが要求されるんでしょうね。

何故かは知らんけど、JRに○○な人が乗ってる確立って結構高いんです。それもこれもあれもどれも、JRが知らずに、サブリミナル的に仕掛けてくる精神修行に耐えられない人たちが量産されるからではないでしょうか?でも、こういった精神修行を乗り越えられたら、確かに思いやりある人間性が培われるよね!それを見越して、座席にしろ、こんな構造を作った人ってやっぱり天才だ!

 


まとめ

時間に縛られない、無理をしない、合理性にとらわれない、精神修行ができる…その名も~…キャプテン・ウソ~ップ!じゃなかった、JR!

ほんとスゴいよね、JR!天才だよね、JR!正直、まだまだ好きなところはいろいろあるけれど、これくらいにしときましょう。でないと卒論書けちゃうよ。

え?反語法?何それ?

ああ、『オリガ・モリソヴナの反語法』ね。ホントよく訊かれるんだよね。オススメの本。本当に面白い本だから是非とも読んでね!

最後にMr.Childrenの『くるみ』より、心に沁みるフレーズを!

ねえくるみ

誰かの優しさも皮肉に聞こえてしまうんだ

そんなときはどうしたらいい?

そんなときはどうしたらいい?気にしない気にしない、一休み一休み。

 

 

by    tetsu